※こじゅまさですが喘いでいるのは小十郎です。


























ぴちゃぴちゃと下品な水音が股の間から聞こえる。
伊達政宗はこぼれそうになる高い声をこくりと飲み込み、体中から溢れる悦を誤魔化すように天井を仰いだ。仰いだ先の天井はところどころ破れている。雨が降ったら漏るだろう。
居城にしている米沢ならともかく仮の宿なので贅沢は言えない。
戦の陣を張るので、そのあいだだけ近くの廃寺を寝床にさせてもらっているのである。

「―――、ふ、」

思わず擦れた声が出た。
政宗は慌てて奥歯を噛み締める。ぴちゃり、ぴちゃり。股の間で水音をたてて、政宗の性器をしゃぶっている男が笑ったのがなんとなく解った。感触、というよりは気配か。
ちくしょう、と政宗は舌打ちをする。
なんでこんなに上手いんだ、このやろう。
しかしそれでも身体は忌々しいほど正直に反応する。
男にしゃぶられ、指で育てられた性器は熱をはらみ、堅く反り返っている。見なくてもそんなことは解るが、せめて見ないようにしようと政宗はひとつきりの左目をきつく瞑った。
性器の先端に舌が差し込まれる。
急激に走った強い刺激に、政宗は思わず男の髪を鷲掴んだ。

「こじゅ、ろ、ッ」

同時に、下半身に開放感が広がる。
達したのだ、とぼんやりと政宗は思う。ちゅるちゅると男が政宗のこぼした熱を吸い上げる音が狭い部屋のなかで卑猥に響く。しまいにあますところなく性器を舐め取られ、それでようやく男は政宗の股から顔を上げた。
かすかに乱れた前髪が秀でた額にかかっている。
政宗は熱でまだ朦朧としている意識のなか、その前髪を一筋掴み、撫でつけてやった。男は懐紙で口を拭い、それから政宗に向き直り、軽く会釈をする。
ではこれにて下がらせていただきますと言う。
政宗は唇を尖らせ、一旦撫でつけた男の髪をくしゃくしゃと掻き混ぜた。

「Hey、いつも言ってンだろ。おまえは事務的過ぎンだよ」
「事務的過ぎるもなにも、これは極めて事務的なことでありますれば、それ以外にどう対応すればよいと仰るのです。小十郎に色小姓のようなことを期待されるのは筋違いというもの。ご冗談もほどほどにしていただかなくては、お互いに気色が悪くてかないませぬ」

あくまでもお慰みのお手伝いだと存じております。
男は、―――片倉小十郎は涼しい顔でそう吐き捨てる。
政宗は不満げに顔を歪めた。先刻までひとの股の間に顔を埋めていた男が、その一瞬後には常と変わらない小言をのたまっている。なんとなく、腑に落ちない。
確かに小十郎にこんなことをさせているのは、戦のときだけである。
初陣の折、あまりにも緊張が過ぎて身体を震わせていた政宗を落ち着かせるために、小十郎が自慰を教えたのがそもそもの始まりで、それ以来なんとはなしに戦の前後の処理を自分の右目に任せてしまっている。お互い気心の知れた仲であり、また気の抜けたところを襲われるということは間違ってもありえないので、その気軽さのせいでずるずると何年間もこの行為は続いている。
他の小姓にやらせてはと、ときどき小十郎は言う。
しかし政宗は不思議と、そういう気分にはなれないのだった。

「明日はいよいよ出陣にございます。政宗様もどうかお早くお休みくだされ」

では、と小十郎はまた立ち上がろうとする。
政宗は咄嗟に手を伸ばし、小十郎の陣羽織の裾を掴んだ。小十郎の眉がすこし持ち上がる。なんですかと問われ、政宗は口を開くだけ開いてみたが、特に言うべきこともないので言葉はもちろん出てこない。
べつに何を望んでいるわけではないのだけれども。ただ矢張り、自分の右目はすこしばかり情緒やら余韻やらが足りなすぎるのではないかと思うのである。
小十郎は戸惑ったような顔をして政宗を見下ろしている。
政宗は再び口を開き、すこし首を傾げた。

「Ah,おまえは」
「は、」
「おまえは、慰みとやらはいらねェのか」
「―――何を仰っているのか解りかねます」
「だからよ、おまえは出さなくて平気なのか?」
「政宗様」

ぴしゃりと手を振り払われる。
もともと厳めしい小十郎の顔が一層に険しくなった。しかしもう十年も付き合っていれば、いちいちそんなものを見たことくらいで焦ったりはしない。どうなんだ、と政宗は問いを重ねた。 どうなんだ、おまえは、おい。

「おまえだって男なら、Masturbationくらいすんだろ?」
「―――するにせよ、そんなことはあなたが気になさることではありません。とっとと寝ちまってください」
「なァ、小十郎」
「なんです」
「俺がしてやろうか」

それはほんの思いつきだった。
手を上下に動かしてみると、信じがたいものを見るような目で思い切り睨み付けられた。
小十郎はしばらく固まっていたが、政宗が手を伸ばして袴の結び目に指をかけようとすると、はっと我に返り、ようやく慌て始めた。お止しくださいと言う。馬鹿なことを言うのは止めて寝ろと言う。
見れば小十郎のよく日に焼けた肌が、かすかに赤らんでいる。
いつも鉄仮面の右目がやたらに慌てふためく様子がおかしく、政宗の機嫌はすこし上昇した。

「小十郎、いいじゃねェか。いつも俺ばっかりが好い思いしてンのはFairじゃねェと思ってたんだ」
「何を仰っているのか意味がよく解りませぬ。政宗様、ご冗談はもうすこし場所と場合を選んで言っていただきたい。明日は戦なのですぞ」
「戦だから、だろう?自分で出すよりひとに出してもらったほうが気持ちいいっつったのはおまえじゃねェか」
「だからそんなことは家臣に対して主が考えることではありませぬと先程から申し上げている。いい加減にしてくださいませ、政宗様。小十郎はあなたの冗談に付き合うほど暇ではないのです。寝てください。一刻も早く。そしてその手をお離しくだされ」
「おまえの出したら寝てやる、よ」

政宗はにんまりと笑みを浮かべ、小十郎の足をぐいと自分のほうへ引き寄せた。
ぐらりと身体の重心がずれ、小十郎が尻餅をつく。政宗はすかさずそれに乗りかかり、袴の結び目に手を延ばした。しかし小十郎は政宗の両の手を掴むとそのままぐいと身体を起こし、反対にこちらの背を床につけようとしてくる。政宗は舌打ちをした。

「主の好意は素直に受け取れよ」
「畏れながら小十郎には過ぎたご好意でございますゆえ、遠慮させていただきたい」

お互い向かい合う形で睨み合う。
単純な腕力でいえば六爪を操る政宗のほうが上だが、体重の重みは小十郎に分がある。このままでは埒が飽かない。どうしたものかと政宗は唸り、ふとそういえば足のほが自由になることに気付き、口元を笑みで歪める。
小十郎が政宗の表情の変化に、不安げに眉をひそめた。

「政宗様、なにを―――ッ、」

小十郎の低い声が、途中で悲鳴じみた声に変わる。
かすかに開かれていた股の間に、足を潜り込ませたのである。
政宗は勝ち誇ったように笑みを浮かべながら、ふん、と鼻を鳴らした。

「なんだ、矢っ張りおまえも溜ってンじゃねェか」

足の裏で小十郎の股間をさすれば、すでに彼の性器は堅くなっていた。
矢張り戦の前は小十郎でも高揚するのだ。常に平静な男に自分と同じ弱味を見出したようで、政宗は愉快な心地になった。ぐいぐいと足の裏で性器を踏んでやれば、息も段々と荒くなっていく。
小十郎は股を閉じて政宗の動きを止めようとしたが、その前にもう片方の足も潜り込ませてやる。
忌々しげな舌打ちの音が聞こえたので、政宗は声をあげて笑った。

「Hey、きもちいいか、小十郎?」
「お、よし、ッ―――くだ、さ、」

荒い息のなかで小十郎が唸る。
政宗は目を細め、唇を尖らせた。
足の裏で感じられる彼の性器は確かに悦を訴えている。それなのに小十郎は相変わらず止めろだのどけだのしか言わない。そのうえ、難しい顔ばかりしている。
なんだよ、と政宗は思った。
せっかく俺がよくしてやろうというのに。
気に食わないので自然と動きが乱暴になった。踏みつぶすような動きに、小十郎の眉がひそめられる。

「まさむねさま、どう、か、」

冗談はこれくらいにしてください。
懇願する顔は悪くないが、言葉がまったく気に食わない。

「べつに冗談じゃねェよ」

政宗はまた不満げに鼻を鳴らし、親指で性器の根本をぐりぐりと抉る。

「ッ、あ、―――ぅ、う、ッ」

高い声をもらした小十郎が、自分の陣羽織の襟を噛んだ。
絡んだ指から力が抜けていく。政宗は器用に足の裏で布越しに性器を撫で上げ、ときおりその天辺に指を抉り込ませる。小十郎の吐息が荒くなり、体が震え出すのがとても間近に見える。きつく寄せられた眉間は、常ならば男の機嫌の悪さを示すはずのものなのに、すこしばかりの目尻の赤みだけで、どうしてこうもいろめいたものに見えるのかが不思議だった。
自分の右目はこんな顔もするのだ、と思う。
ん、ん、と布を噛んだ小十郎が呻く。
じわりと足の裏に濡れた感触が滲み、政宗の背筋にぞわぞわと得体の知れない喜びが駆け上がった。

「好さそうじゃねェか、なァ、おい」

小十郎は必死で首を振っている。
ぐっと強く性器を踏み付ける。確かに痛みを感じているはずなのに、袴の湿りはひどくなる一方だ。政宗は愉しくて仕様がなかった。いつも余裕ぶっている男の取り乱した顔も、漂う生々しい雄臭いにおいも、唇の隙間からもれる擦れた声も、すべてがひどく新鮮で、刺激的である。
は、と政宗は息をこぼす。
じわり、と、下半身が重くなるのが解った。

「小十郎、小十郎、小十郎」

顔を寄せ、名前を繰り返し呼んでみる。
小十郎の目がぎょっと見開かれ、目元の赤みが一気に顔中に広がった。

「あ、ッ―――くぅう、ん、ッ」

一際大きく小十郎の体が震え、それから脱力する。
絡んでいた指がするりと解け、ぱたりと床に落ちる。政宗はぱたり、とひとつ瞬きをした。足をそっと引いてみる。小十郎の袴から、ぽたり、と床にしろいものが垂れた。
達したのだ。
政宗はひどく満ちた心地になり、思わず笑った。

「どうだ、些ッとは慰みになったか」

揶揄のつもりではなく、心底からの言葉であったのだけれども、顔を上げた小十郎は般若もかくやというおそろしい顔をしていて、政宗は思わず尻を着いたままずるりと後ずさりをした。
ゆらり、と小十郎が立ち上がる。
まさむねさま、という声は、まるで地獄の底から響くようなそれだった。

「な、なんだよ」
「―――ご冗談も度が過ぎると、流石に見過ごしかねますな、政宗様」

お覚悟はよろしいか?
声にかすかに笑いが籠もっている。
これは相当怒っているときの口調だ。政宗は頭の半分で、これはまずいかもしれない、と思い、もう半分でまだ「冗談」だと言って憚らない頭の固い男の言葉に憤りを感じた。
冗談じゃないと言っているのに。
こいつはいつも俺の話を聞かない。
政宗は舌打ちをして、髪を掻き毟った。

「だから、さっきから冗談じゃねェって言ってるだろうが。俺はな、されるばっかりじゃなくッて、たまにはおまえをきもちよくさせたかっただけだ。それのどこが悪いってンだよ、Ah?」

きつく睨み上げてやると、小十郎がぽかんと間の抜けた顔をして固まる。
政宗は首を傾げた。小言も怒声も飛んでこない。おいどうしたと言ってやると、ようやく小十郎は我に返ったのかくるりと政宗に背を向け、そのまま逃げるように部屋を出ていこうとした。
政宗は慌ててそれを呼び止める。

「おい、何処行きやがる」
「―――袴を、」

洗って参ります。
吐き捨てるようにそれだけ言って、小十郎はぴしゃりと戸を閉めた。
残された政宗はぼうとしばらく弛緩して、それからゆっくりと天井を仰ぎ、息を吐いた。息にはたっぷりと熱が込められている。
下半身が甘ったるく重い。
小十郎が帰ってきたらもう一度抜いてもらおうと政宗はぼんやりと思った。
















018:触 れ る



伊達の足コキがやりたくてやっ(ry
5/16で小十郎の日だったので小十郎にいい思いをさせてあげたくてですね・・・うん。
伊達のふぇらーりをしたあげく足コキまでしてもらえるなんてホント、小十郎にしてみれば
天国じゃね?あれ?私間違ったこといってる?アレ?
日付が変わったことに関してはもう何も言いません。

2011/05/17



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