雀でわんこプレイ。
























特に何を見るというつもりもなく点けっぱなしにしていたテレビに、子犬が映し出された。
どうも芸能人の飼い犬らしい。ビデオを手に持った飼い主に飛びつくように部屋から出てきて、 尻尾を振りながらくるくると回って見せる。他のパネリストがかわいい、と黄色い悲鳴をあげ るのを聞きながら、猿飛佐助はぱたりと手に持っていた雑誌を胸に伏せた。
犬はちいさな柴犬で、大きな目は黒い。
飼い主が他のことをしようとしているのに絶えず画面に映り込んでくる様を見ていると、なん とはなしに誰かのことを思い出してしまって、佐助は薄く笑みを浮かべた。

「何を笑ってるんだ」

ソファの背もたれの向うから、かげつながひょいと顔を出す。
佐助は身体を起こさないまま視線だけを雀に向けて、ああ、と笑った。

「犬」
「犬?」
「そう。かわいいよね」

佐助は犬がすきだ。
猫も嫌いではないが、犬の多少面倒なほどの忠実さや執拗さのようなものがたまらなくいい、 と思う。たぶん、自分は犬に限らずそういった性質のものを好むのだろう。
昔からの友人の真田幸村も、考えてみればとてもよく犬に似ている。
ふうんと鼻を鳴らすかげつなが座るスペースをソファに作ってやって、佐助はうふふと含む ように笑った。

「かげつなさんも、ちょっと犬に似てるよね」

雀だけど。
かげつなが、ぱちぱちと目を瞬かせる。

「どこが」
「なんていうの、こっちの都合も構わず構って構ってって来るところとか。あと変に律儀で なんだかんだと俺様のこと大事にしてくれるとことか。忠犬ってかんじ?」
「褒めてんのか貶してんのかどっちだ、そりゃ」
「褒めてるよ。俺、犬もすきなんだよね。なんか馬鹿っぽくてかわいいじゃん」
「ふうん」

かげつなは首を傾げた。
テレビ画面では、犬を抱いた芸能人が顔をだらしなくゆるませて、ほおずりをしている。き もちよさそうに目を細める柴犬を見ていると、段々と犬もいいよなあという気になってくる。 もちろん雀よりかわいらしい生き物なんてこの世には存在しないのだけれども。
犬がぺろりと飼い主のほおを舐める。
あ、やっぱりああいうのいいなあ。
ぼんやりとそんなことを考えていたら、ふいにほおに濡れた感触がして、佐助は思わずひゃっ と情けのない声をあげてしまった。
慌てて顔を上げると、いやに間近にかげつなの顔がある。

「かげつなさん?」

名前を呼んでも返事はなく、代わりにぺろりともう一度ほおを舐められた。
かげつなはソファに四つん這いになって、佐助のほおを舐めている。大人しく舐められながら、 なんかの拍子に盛っちゃったかなあと佐助は思った。
そのようなことは、雀にはままあることなのだ。
土曜日の昼間で、セックスをするのに相応しい時間というわけではないが、したとしても誰に 迷惑がかかる時間というわけでもない。かげつなに向き合って肩を抱いてやりながら、そうい うことになってしまってもまあいいか、と思う。
ぬるい舌の感触がくすぐったい。
佐助は喉をくつりと鳴らして、かげつなの髪をくしゃりと撫でた。耳の後ろを撫でてやると、 切れ長の目が心地よさそうに細くなる。
思わず「犬みたい」とつぶやくと、かげつなの目がちらりと佐助を見上げた。
黒い眼に自分の姿が映り込んでいる。そしてかげつなは薄い唇をぱかりと開くと、

「わん」

と言った。
佐助は一瞬、固まった。 かげつなの顔はいたって真面目で、何かおかしなことを言ったという顔ではない。固まった佐 助のことなど気にしないで、舌で舐める範囲を広げ、今は首を舐めている。首の筋をなぞるよ うに舐められると、背筋にぞくぞくと震えがいった。
カッターシャツのボタンが下から外され、今度は腹を舐められる。
腰を高くあげ、這いつくばるようにして佐助に舌を這わす姿は、犬そのものだ。ぴちゃりと濡 れた音が響くのに、佐助は腰がずんと重くなるのを感じた。丁寧に腹に浮かんだ筋肉の筋を舐 めているかげつなの髪を撫でてやる。薄く開かれた目の縁がうっすらと赤く、雀も興奮してい るのだと思うと佐助の身体はますます熱をはらむ。
じい、とジーンズのジッパーが下がる音がする。
すでに芯を持っていた佐助の性器に、かげつなの口元がにんまりと歪むのが見えた。

「―――やらしい顔しちゃって」

犬のくせに、と言うと、かげつなはその顔のままでまた「わん」と鳴いた。
うわあ、と思う。
それだけでぞくぞくと背筋が震える。
下着越しに性器の先端を口に含んだかげつなが、たのしそうに喉を鳴らして笑った。

「おい。興奮し過ぎじゃねェか。まだろくに触ってねェのに」
「だってあんたが変なこと言うから」
「ふうん、―――ほんとうに好きなんだな」

犬が、と言う。
佐助はうう、と唸った。
しばしば起こることなのだけれども、雀とのセックスは、こちらが主導権を握るべき立場にあ りながら、辱められているような気分になる。すでに勃起した性器に、かげつなは触れるか触 れないかという位置でふうと息を吹きかける。すると思わず高い声が出そうになる。身体の震 えでそれが解ったのか、嬉しそうにかげつなが笑う。
ことセックスにおいて、雀はどん欲で意地悪だ。
あまり長い時間は耐えられそうになかったので、佐助はぐいと強引にかげつなの身体を反転さ せると、ソファに這いつくばる姿勢を取らせ、腰を掴んでやる。かげつなは一瞬驚いたように 目を丸めたが、佐助が何をしたいのかを読み取ると、すぐさま大人しくクッションに顔を埋め、 腰を高く持ち上げた。
犬ごっこをしているからだろうか。
いつもよりずっと素直で、なんだかおかしな気分になる。
けれどもその気分は決して不愉快なものではなかったので、佐助は前に手を伸ばして小十郎の ジッパーを下げると、下着ごとジーンズをずるりと膝まで落としてやった。




























「は、―――ァ、あ、あっ、あ」

濡れた音と、くぐもった声が前から聞こえる。
ぴちゃぴちゃとかげつなの秘部を舌で解しながら、よく締まった太ももをぎゅっと掴む。と きどき爪を立ててやると、ひくりと身体が跳ねるのがとてもたのしい。一度も触れていない かげつなの性器からはだらしなくしろい液体がたらたらと垂れていて、その光景のあまりの いやらしさに、佐助はくらりと眩暈すら覚えた。
解れた秘部に指を差し入れる。
佐助の指を二本するりと飲み込んだその場所は、まるでもっともっとと言うように、ひくひ くとうごめいている。三本目の指を差し込み、ゆっくりと解そうとすると、それに抗うよう にかげつなの腰がちいさく左右に揺られた。
佐助はかげつなの身体に折り重なるようにして、耳元に声を注いだ。

「も、挿れてほしい?」

こくこくと頷く。
佐助はその体勢のまま、かげつなの性器をぎゅっと掴んだ。ぎょっとしたようにかげつなの 顔が持ち上がる。もうこぽこぽと溢れている熱をさらに絞りとるようにかげつなの性器を擦 り上げ、自分の下着を下ろし、堅くなった性器を解れた秘部に押し当てた。

先端に吸い付くように、かげつなの秘部が伸縮する。
ほうと息がこぼれる。

「ん、ん、さるとび、ァ、あ」

かげつなはもどかしげにまた腰を振った。
佐助は笑いながら、かげつなの性器の先端に爪をたてる。

「ッ、ぃ、あ」
「ね、かげつなさん。おねだりして」
「はふ、は、は、あ―――は、あ?」
「おねだり。だってあんた、犬なんでしょ」

わんって言ってみて?
意地悪く性器の根本に指を絡ませると、それこそ犬のようにかげつなが唸り声をあげた。 高くあげられた尻をすこし強めに叩いてみると、指を絡ませた性器が芯を持つのが解る。赤 い手の痕がついた場所をてのひらでさすりながら、佐助は頭にこもった熱を散らすように、 ほうと息を吐いた。
かげつなは荒い息を吐きながら、ソファの縁を掴んでいる。
佐助はさっきと同じ場所をぱんと叩いて、声を低くした。

「ッひ、ァ、」
「「わん」は?」
「てめ、―――ん、あっ、あ、あァ、ん、ん」

かげつなは口を噤んでしまって、意味のある言葉を吐こうとしない。

「さっきまでノリノリだったくせに―――どうしたの?」

往生際の悪い雀の性器は、尻を叩けば叩くほど熱を持って膨れていく。
もしかすると叩かれるのを期待して焦れているのかもしれない、と佐助は思った。この雀な らいかにもありそうなことだ。きもちのいいことにはいつだって、不必要なくらい全力なの だ。それは今更解り切ったことだけれども、それよりも大事なのは要するに佐助のほうがそ ろそろ限界だということだった。
ひどくきもちよさそうに喘ぐかげつなも、赤く染まった尻も、まったく目に毒以外のなにも のでもない。からからに乾く喉を唾液で潤し、佐助はもう戯れるのは止して、とっとと身体 重ねてしまおうとかげつなの腰を掴もうとした。
が、それは適わない。

「う、わ」

かげつなはくるりと身体を反転させると、佐助の首に腕をかけ、そのままソファに仰向けに 倒れ込んだ。ぐらりと揺れる身体を佐助は咄嗟に立て直そうとしたが、自分より一回り大き なかげつなに力で敵うわけもなく、出来たことと言えば腕を突いてバランスを保つことくら いだった。
目の前に切れ長の目がある。
それは欲に濡れていて、ひどくいやらしくひかっていた。

「かげつなさ、」
「猿飛」

声は遮られ、代わりにかげつなの足の指がつうっと露出した佐助の性器をなぞる。思わず息 を飲むと、くつくつと雀が喉を鳴らして笑った。

「挿れてェか?」

低い声がとろりと溶けて、鼓膜にまとわりついてくる。
足の指は器用に佐助の性器を下から天辺までなぞり、爪の硬い感触が驚くほど強い刺激とな って体中を駆け巡った。それでも佐助はふんと鼻を鳴らし、それはあんたのほうでしょうと 言ってやった。かげつなは黙ったままにんまりと笑みを浮かべ、佐助の性器を足の指で弄り 続ける。それを避けて無理矢理に秘部に性器を押し込もうとしても、かげつなはぴったりと 膝を重ねてしまっていて足を開くこともできない。
逆に膝で性器を抉るように擦られてしまった。

「―――ん、ッ」

思わず口を突いて出た声に、かげつなが笑った。
するりと首の後ろを撫でられて、それすらも佐助をひどく追い立てる。

「さるとび」
「な、に」
「早く挿れたいだろう」
「だったら、なに」
「おねだりは?」
「―――は?」
「おねだりだ」

かげつなは笑みを浮かべたまま、身体を起こし、膝を立てる。
そして呆然と目を丸めている佐助の顎をぐいと持ち上げ、言った。

「「わん」って言ってみろよ、猿飛」

顔にかあっと熱が集まるのが解った。
なんて意地悪な雀だろう。佐助は唸った。かげつなは笑いながら佐助に跨り、勃ち上がっ た性器に自分の秘部を擦り付ける。くちゅりと音が鳴る。自分の性器が熱をこぼしている せいだ。佐助はますます顔を赤くした。
かげつなが腰を下ろすと、先端だけ秘部に潜り込む。
しかし刺激を予期して息を詰めると、さっとかげつなの身体は逃げていく。あくまでも佐 助に言わせるつもりなのだ。焦れったい動きに佐助の焦燥は増していく。挿入まがいのこ とをする度に、目の前の雀の顔がとろとろと溶けていくのもほんとうに腹立たしい。
佐助はとうとう、諦めた。
この雀にセックスで主導権を握ろうなんて思うこと自体が、そもそも間違っていたのだ。

「―――ん、」
「うん、なんだって?」
「う、」

意地悪くかげつなが問い返す。
佐助は噛み付くようにかげつなの唇にキスをして、息が続かなくなる寸前で唇を離し、そ れから吐き捨てるように、

「わん!」

と鳴いた。
かげつなはすこしだけ目を丸め、それからくつくつと喉を鳴らしながら佐助の髪をくしゃ くしゃと掻き混ぜた。そうして、良い子だな、と耳元でささやいてから、ゆっくりと腰を 下ろし、佐助の性器を飲み込んでいく。その緩慢な動きは、「待て」をされ過ぎていた佐 助には苛立たしいほどで、腹が立ったので腰を掴んで一気に根本まで挿入してやると、雀 はひどくきもちよさそうな声をあげて、佐助の腹に熱を放った。

「あッ、ァア、―――ふ、ァ、あ」

かたかたと小刻みに震え、ぱたりと佐助の肩に額を落とす。
耳に荒い息が吹き込まれる。佐助は思わず首を竦めそうになる。かげつなが落ち着くまで 待ってやろうかと思ったら、荒い息の合間に「もっとしてくれ」と甘ったるく囁かれたの で、佐助はもうなにもかも馬鹿らしくなって、プライドも気遣いもぜんぶ捨て去って犬に なることに決めた。




























三回ほどそれこそ犬みたいに交わったあと、かげつなが満足げに「俺も犬は嫌いじゃねェ」 と言った。なにかと思ったらさっきまでの佐助のことを言っているらしい。つくづく、い やらしくて意地悪い雀だ。冷静になったら佐助は急にさっきまでの自分がひどく恥ずかしく 思えて、黙って辺りのセックスの名残を拭き取ったりしている。
雀はもちろん協力しない。
佐助は息を吐いた。

「前言撤回。あんたぜんぜん犬じゃない」
「そうか?」
「自分勝手だし、やりたいことしかしないし、意地悪だし気紛れだし、エロイし、―――」

要するにかげつなは雀なのだ。
うずくまってフローリングの床を雑巾で拭いていると、ソファの上に寝転んでいるかげつ ながぽんぽんと佐助の頭を叩いてきた。なんだよと睨み上げるつもりで顔を上げると、ちゅ、 という馬鹿みたいな音を立てて軽くキスをされる。
目を見開くと、かげつなが真面目な顔で首を傾げた。

「でも好きだろう、雀」

佐助は何も言うことができなかったので、とりあえずまだ何か言いたそうな雀の口を、自分 の口ですばやく塞いでやった。
















034:戯 れ る



小十郎weekネタ。ホントは5/11(こじゅわんこ)にあげたかった・・・。
わんわんネタとかそういう色物は基本ぜんぶスズメにやらせとけばいいと思っています。



2011/05/14



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