五時過ぎに携帯が震えた。 表示された名前に佐助は目を丸める。片倉小十郎、という五文字を佐助は何度か左から右に読んでは確認して、十回目 のコールを聞いてからようやく電話に出た。もしもし、という言葉を言い切る前に電波に乗った低い声が、ひどく不愉 快げに今すぐそこから消えろ不審者、と言った。 佐助はしばらく黙って、それからへらりと笑う。 「小十郎さん、久し振り」 電波に乗った声は直に聞くそれとはすこしちがう。 それでも充分だった。三週間振りに聞く小十郎の声は相変わらず低くて、からからに乾いた砂のようにさらさらと零れ ていく。佐助は携帯を握っている右手の甲に左手をひたりと重ねて、うっとりとそれに聞き入る。 小十郎はうれしそうな佐助の声に気付いたのが、忌々しげに舌打ちをした。 『緩んだ声を出すな』 「この声は元からですよ」 『それよりとっととそこから消えろ。 そのマンションには監視カメラが付いてんだよ。今警備会社から連絡が来た』 「――――――わお」 『そろそろマンションの警備員が来る。 前科持ちになりたくなけりゃ、今、すぐに、一刻も早く、出て行け』 一言一言小十郎は区切って言う。 佐助はそれに一々頷いて、最後にわかった、と言って通話を切った。 ひとつ息を吐いて、エレベーターのほうへ向かう。その途中でまた携帯が震えた。 小十郎だった。 佐助は首を傾げて、携帯を開いてどうしたの、と聞く。携帯の向こうの小十郎はしばらく沈黙で返しながら、そのあと にマンション出てから右に向かって三分歩け、と言った。 『ちいさいカフェがある。そこで待ってろ』 それだけ言って小十郎は通話を切った。 佐助は突っ立ったまましばらく通話の切れたままの携帯を阿呆のように握って、それからまた首を傾げた。会ってくれ るらしいという事実が佐助の頭に収まるまでに、五秒ほどかかった。ようやく事実を飲み込んだ佐助は、とりあえず警 備員に連行されないように急いでマンションを飛び出た。 言われたように歩くと、一見ただの一戸建てに見える建物にちいさな看板が出ているのが目に入った。テラスに何対か の椅子とテーブルが並んでいて、ガラス張りのドアの向こうにはショウケィスとカウンターがある。佐助がドアを開け ると、ちりん、とベルが鳴った。ひんやりとした冷房の空気が佐助の体を包み込む。 おひとりさまですか、と店員に聞かれて佐助はすこし迷ってからあとで連れが来ます、と答えた。 窓際の席に通されて、コーヒーを注文して佐助はほおづえを突く。しばらくぼんやりと外の風景を眺めていると、カラ フルな住宅街にひどく不釣り合いな真っ黒いスーツを着た大きな影が視界を過ぎった。 ちりん、とドアベルが鳴る。 「連れが居ます」 低い声が背後でした。 佐助は振り返る。振り返ったところを、ぺしりと小十郎に叩かれた。 「痛ぇ」 「阿呆」 小十郎は息を吐いて、佐助の坐っている席の正面に座り込む。 店員が注文を聞きに来た。小十郎はメニューを一瞬だけ見て、カプチーノを注文してからそのメニューでまた佐助の頭 を叩いた。阿呆、とまた言われて、佐助は頭を抑えながらへらりと笑う。 貴様マゾか、と小十郎がうんざりした顔で言った。 「警備会社から赤毛の不審者が居るんだがどうしたらいいかと言われたときは思わずそのまま留置所に放り込んでくだ さいと言ってやろうかと思ったぜ」 「そりゃあ有り難い。あんたのおかげでなんとか綺麗な経歴を保てた」 「何してやがった、あんなところで」 「言わずもがななことをお聞きになるね」 佐助はにいと口角をあげる。 あんたに会いに行ったに決まってるだろう。そう言うと小十郎の顔がぴたりと固まった。薄暗い店内のなかで、光彩も 消えた黒目がちな目がひどくつめたく佐助のことを見据えている。 おまえは、と小十郎は口を開いた。 「おまえはほんとうに、阿呆だな」 それ何度も聞いたよ、と佐助は首を竦める。 カプチーノが運ばれてくる。小十郎はそれを一口含んで、それから長い息を吐いた。 店内にはジャズが流れていて、何人かの近所の主婦のように見える女性たちがたのしげに話している。三十代の男ふた りという組み合わせは異色だった。あんた仕事は、と聞くと抜けてきた、と言う。職場はここから歩いて十分なのだと 小十郎は言った。たしかに住宅街を抜けるとすぐにビルが立ち並んでいる。 大丈夫なのかよ、と聞くとすぐに帰るから構わんと小十郎は仏頂面で答えた。 「おまえがあんまり阿呆だからな」 一言言ってやろうと思って来た。 小十郎はそう言って、ちらりと笑う。 佐助はつうと背筋に寒気がはしるのを感じた。 小十郎はあまり笑わない。ただ時折笑ってくれることがあって、それは普段の仏頂面からすると信じられないくらいに やわらかくてぬるまったい。佐助を馬鹿にして小十郎はよく笑ったけれども、そのどれも佐助はとてもすきだった。 小十郎は口角をあげて、口先だけで笑っている。 それは今まで見たことがないくらいに、つめたい笑い方だった。 背筋の震えを誤魔化すように佐助は早口で言う。 「何を言ってくれるわけ」 「さァな。その前に聞いておこうか」 「俺の話のことかい」 「そうだ」 「へぇ、聞いてくれるんだ。今まで散々無視したくせに」 「でなけりゃこんなところに呼び出したりしねェ」 けりを付けてやる。 佐助はしばらく小十郎の顔を眺めてから、コーヒーを一口で飲み干してすこしだけ笑った。もしかしたら笑い顔にはな っていなかったかもしれない。指先が震えそうだった。小十郎はただ静かなつめたい目で佐助を見据え、何も言わずに 言葉を待っている。 あんたが、と佐助は言った。 「あんたが、どうもさあ。うん――――――すきみたいなんだよな」 へらりと笑うと、小十郎の目がすこしだけ見開かれた。 それからまた細められる。例の佐助を馬鹿にしきった顔になった。 薄い唇がなにかを言おうと開きかけるのを、ちょっと待ってよと佐助は制止した。もうちょっとだけ俺にも話させてよ と言うと小十郎は口を閉じて、それから顎でとっととしろと促す。 佐助は息を吐いて、また言葉を続けた。 「会えなくなってさ、そうしたらなんだかあんたのことばっかり考えちまってさ。 今までそんなことなかったんだぜ。だって俺は今まで付き合った女のことなんざひとりだって覚えちゃいねえよ。 でもさ。そういえばあんたはずうっと特別で、あんたのことはずうっと覚えてて」 忘れられねえんだ。 小十郎は黙っている。佐助は更に続けた。 「あんただけなんだ、こんなの」 言ってしまうと気恥ずかしくなって、佐助は髪を掻き上げてすこし笑った。 小十郎はまだ黙っている。佐助は空になったコーヒーカップを指先で弄くりながら、正面に坐っている男がなにか言葉 を発してくれるのをただ待った。小十郎は目を閉じている。窓から差し込んでくる午後の日のひかりが、テーブルの上 に置かれた小十郎の骨張った手に斑なしろを投げかけているのを佐助はじいと眺める。 しばらくしてから小十郎は目をゆるゆると開いた。視線は窓の外に向いている。 「それで」 「それで、って」 「それで、おまえはどうしたい」 ひたりと小十郎の視線が佐助に向いた。 どうしたい。二度小十郎は言った。俺がすきなおまえはそれで、これからどうする。 「そりゃ出来れば、あんたと付き合いたいよ。恋人になりたい」 そう言うと、小十郎は口角をあげた。 恋人ねェ。感心したような声で言って、それから目を笑みの形に歪ませる。恋人か。 「そいつァ傑作だ」 「どういう意味よ、それ」 「『恋』人だぜ。おまえ、日本語にまで不自由してやがるのか」 「だからさっきから言ってるでしょうに。俺はね、あんたが」 佐助は一拍置いてから、言った。 あんたがすきなんだよ。小十郎はまた笑みを浮かべる。それから腕の時計に目を落とした。 時間だ、と言う。 「おまえの譫言を聞く時間はここまでだな」 うわごと、と言われて佐助は眉を寄せた。 小十郎は構わず残っていたカプチーノを飲み干すと、とん、とひとつテーブルを叩いた。そして椅子にもたれながら、 俺が言うのはシンプルだぜ、と言った。 ふたつほど言っておく、と続ける。 まずは一つ。 「俺はおまえが思っているのの――――――まァ軽く見積もって十倍はひとでなしだ」 佐助は思わずはあ、とほうけた声を出した。 小十郎はくつりと笑う。冗談だろう、と佐助が言うとこんなところで仕事さぼって冗談言ってる程俺も暇じゃないと返 ってきた。佐助は黙り込んで、それからうそだあ、とこぼす。 片倉小十郎は、一般的に見て誠実かと言えば首を傾げなくてはいけないけれども、ひとでなしではないとすくなくとも 佐助は思っている。林檎とだってきちんと別れていた。佐助は子栗鼠と別れるのはとても久し振りの行為だったのだ。 それまではきちんと別れることすら面倒でしていなかった。 佐助はすこし笑いながら、そりゃおれよりもかい、と聞いてみた。 小十郎は真顔のまま、 「当然だろう」 と言う。 佐助は眉を下げる。 「嘘だ」 「嘘吐いてどうする」 「だって俺、あんたのことそんなふうに思ったことねえよ」 「そりゃおまえが都合の良い部分しか見てねェからだ」 小十郎はそう言って、それから椅子から背中を離してテーブルに前のめりになった。 おまえが思ってる俺は、まァ面は怖ェが面倒見が良くて気の置けないセックスの上手い男というところだろう。小十郎 の言葉に、佐助はまあそんなところ、と答えた。あと寒がりでさみしがりやだよね、と付け加える。 小十郎はそれには答えず、そりゃ随分な買い被りだ、と苦い顔で笑った。 そうかな、と佐助は首を傾げる。 「あんたは俺のこと、すごくあまやかすじゃないか」 「だからなんだ」 「そりゃ、俺が“かわいそう”だからじゃねえの」 「――――――とことん阿呆だな」 呆れ果てた、というふうに小十郎は首を竦めた。 “かわいそう”で男と寝る程物好きじゃねェと小十郎は言う。じゃあなんで俺とセックスしたのさと佐助は聞いた。 小十郎の目がすうと細くなって、口角があがった。じゃあ聞くが、と低い声が空気を震わせた。 「おまえはセックスする時、どうしてするんだ」 「したいからに決まってるね」 「そういうことだ」 俺も変わらん、と言う。 「おまえとしたいからした。それだけだ」 「じゃあ、あまやかすのは、何よ」 「あまやかすのは、俺に下心があるからに決まってるだろう」 阿呆。 佐助はほうけた。 小十郎はこれがひとつめだ、と平然とした顔で続けている。ちょっと待ってと佐助は言ったが聞き入れられなかった。 二つ目だ、と小十郎は言って、すぐにまた口を開いた。 これは忠告だ。 「俺は止めておけ」 笑みを浮かべながら小十郎はそう言った。 ベッドの上で佐助は息を吐いた。 見知らぬ部屋の見知らぬ寝室で、ちゃらりと鍵を揺らす。小十郎の部屋は当然のことだけれども、小十郎のにおいがし た。シャンプーと石けんと、整髪料。シンプルなにおいがする。佐助はくるりと体を反転させて、うつぶせになってま た鍵を揺らした。ちゃらり、と音が鳴る。 「――――――どうしたもんだろ」 つぶやいてみても、答えは返ってこない。 かち、と時計の針が動く音に佐助は視線をあげた。ベッドサイドに置いてあるアンティックな時計は七時を指している。 小十郎はたしか九時には帰ってくると言っていた。では、と佐助は眉を下げる。 ではタイムリミットはあと二時間だ。 ――――――俺は止めておけ 小十郎の声が蘇ってくる。 意味が解らなかった。佐助は意味がわからない、と言った。 小十郎は笑みをほおに貼り付けたままに、そのままの意味だぜと答える。俺はな、案外おまえさんのことを気に入って いてね。世間一般の男同士の関係としてだが、と小十郎は付け加える。そりゃどうも、と佐助は肩を上げた。 あきらかに納得していない佐助に、小十郎は困ったようにすこしだけ笑ってそれから、おまえさんの為なんだがな、と 言って立ち上がった。テーブルの上に、握った左手が乗っている。指がはらりと解かれた。 佐助はひょいと眉を上げた。 「かぎ、だね」 「あァ」 「あんたンちのかい」 「あァ」 やる、と言う。 「意味がわかんないんですがね」 佐助は息を吐いて、ほおづえを突く。 要らねェなら捨てろ、と小十郎が言うのでとりあえず銀色のそれをてのひらに収めた。ひんやりとした金属の感触がす る。今日俺は九時には家に帰れる、と小十郎は佐助の顔を覗き込みながら言った。 「逃げるなら今のうちだぜ。 今日来ないなら、見逃してやってもいい」 「そりゃ、どういう」 「そういうことだ」 小十郎は言い捨てて千円札をテーブルに置いてドアのほうへ歩き出す。 佐助は振り返って、なんだそりゃ、と苛立った声をかけた。意味がわかんねえよ。小十郎は足を止めて、佐助のほうへ 視線を投げる。やはりそれも冷たい視線だった。 佐助はその視線に、ぴくりと指が震えるのを感じる。 こわい、と思った。 片倉小十郎はこんな顔をする男だっただろうか。 急に求めていた筈の男を見失ったような気がして、胸の空洞が殊更にすうすうとつめたくその隙間を主張しだした。怯 えた顔でもしたのかもしれない。小十郎はくつくつと肩を震わせて、だから言っただろう、と笑う。 「俺は止めておけ。 それから言っておくが、生半可な覚悟で来ねェほうが身の為だぜ」 これは友人としてのアドバイスだ、と言って小十郎は店から出て行った。 残された佐助はしばらく呆然としてから、もう一杯コーヒーを頼んでそれをのろのろと二時間かけて空にしてから店を 出た。そしてすこし考えてからまた小十郎のマンションに向かった。 覚悟なんてすこしも決まってはいない。 出て行こうかとも思ったけれども、なんとか堪えて二時間経った。あと二時間で小十郎が帰ってくる。 佐助は寝ころびながら、ずっと小十郎の言葉の意味を考えている。したごころ、とあの男は言った。ひどく似合わない 言葉に思えるけれども、小十郎も男なのだからそういうものもあるのかもしれない。その対象が自分だというのならば 願ったり叶ったりだと思う。佐助の下心の対象だって小十郎だ。 それじゃだめなのかな、と佐助はつぶやいた。佐助がすきだと言った。小十郎は佐助に下心がある。じゃあそれでいい じゃないかと思うのだけれども、 「『俺は止めておけ』」 小十郎の言葉を声に乗せて、佐助はほうと息を吐いた。 小十郎の言っていることが解らないなんて、今に始まったことではない。 ただあの男の言うことはいつも後から考えてみるとひどく的確で、佐助は自分の薄っぺらい思考より余程小十郎の言葉 のほうが信用できる。その小十郎が俺は止めておけ、と言う。そのことが気にならないと言えば嘘だ。 枕を握りしめて、佐助は目を閉じた。 逃げよう、と体のどこかが警鐘をかんかんと鳴らしている。 危ないよ、と言っている。 佐助は小十郎が欲しい。それは確かだけれど、小十郎に告げた「すき」は言っていてどこか不自然だった。すきではな いのかもしれない。そういう綺麗な言葉はなんだか自分たちの間に置くと、ひどくちぐはぐだ。欲しい。それ以外の言 葉が見あたらなかった。小十郎と一緒に居ても、空洞が消えないのはあきらかなのにそれでも小十郎しか欲しくない。 なのに小十郎は止めておけ、と言う。俺は止めておけ。逃げるなら今のうちだぜ。そうやって笑う小十郎に、佐助はひ やりと恐怖を感じたのを認めないわけにはいかない。こわいと思った。なんだこいつ、と思った。こいつ、誰。 佐助は昔、小十郎が自分に恋をしているのだと思っていた。そして今もきっとそうなのだと思っていた。 今日小十郎に会うまで、佐助はなんとなく期待と一緒にそういう認識を持ち続けていた――――――片倉小十郎は、自 分に恋をしているのだ、と。 ちがうのかもしれない。 だってこんなにひとを追い詰めるものが、恋と呼べるのだろうか。 わかんないな、と佐助は目を閉じたまま思った。 まったくわからない。 小十郎が帰ってきたらそれを教えてくれるのだろうか、と考えているうちに眠ってしまった。 ベッドの端っこに、大きな影が見えた。 佐助は起き上がって、ぼんやりとした頭を振る。静かな声が、 「起きたか」 と言う。 既に部屋は暗かった。 電気付けないの、と佐助は掠れた声で聞いた。影はなにも言わずに立ち上がり、部屋の隅まで行ってぱちりと音を立て て部屋の明かりをつけた。しろいひかりが目を浸食して、一瞬なにも見えなくなる。佐助はてのひらで顔を覆って、し ばらく痛む目を休ませた。その間物音はしなかった。 目を開くと、小十郎が部屋のドアにもたれて佐助を眺めていた。 「いま、なんじ」 「十時」 「随分寝ちまったな」 佐助はすこし笑って、ベッドにまた頭をぽすんと落とす。 居心地が良くてさ、と言うと小十郎もちらりと声を立てて、おまえは昔からひとのベッドで寝るのがすきだなと言う。 そうだね、と佐助は答えた。佐助は小十郎のベッドで寝るのがとてもすきだ。 起こさないでいてくれたんだ、と言うと小十郎は軽く首を傾けて、急ぐことも特にねェからな、と返す。 「ここに居るってことは覚悟が決まった――――――ってェ訳でもなさそうだな」 くつりと顔を笑みに歪ませて、小十郎は言う。 佐助は黙り込んだ。その通りなので何も言えない。 小十郎はドアにもたれたまま、腕を組んでだったら出て行ったほうがいい、と聞いたこともないような優しげな声で言 った。佐助は首を振って、やだよ、とそれに返す。やだよそんなの。 「だって出てったら、もうあんたに会えない」 「会わないほうがいい」 「なんで」 「おまえの為だ」 俺は止めておけ。 何度目かのそれを、小十郎は淡々と言った。 佐助は苛立たしげに髪を掻きむしって、ベッドから身を起こして立ち上がる。そして小十郎を睨み付けた。小十郎はそ れをどうということもなさそうに受け流して、おまえ前に言ったな、と急に話を変えた。佐助は眉を寄せて、きつく視 線を小十郎に向けたままに何のことかと聞く。 「俺が蛇だとかなんとか」 言ったろう、と小十郎の首が傾く。 佐助はすこし考えてから頷いた。小十郎はそれを見てから、視線を床に落として皮肉げに笑い、 そして、 「悪いが、その通りだ」 と。 言った。 次 |