夢 の 中 な ら

























久々に訪れた奥州はまだ雪の中で、片倉の武家屋敷の庭先には確かに佐助の雪だるまが置いてあった。
そうと鴉から飛び降り、さくりと雪の上に降り立つ。子の刻過ぎ、辺りは音が絶えきっている。佐助は既に眠りこけ
ている背中の十助を背負い直して、ほう、とひとつしろい息を吐いた。
こども達の寝所に忍んで、十助を布団の上に寝かす。左右には幸と弁天丸が寝息をこぼしながら眠っていた。佐助は
ふたりの赤い髪をさらと解いて、ちいさく笑みを浮かべてからそこを退がる。外は月が出ている。風は無い。小十郎
の寝所はこども達の寝所の丁度真反対にあるので、佐助はひょいと飛び上がり、屋根を伝ってそこへ向かった。
障子を、わざと音を立てて開く。

「お邪魔しまぁ、す、よ」

座敷の真ん中に、布団が一組ひいてある。
そこに小十郎が寝ているのは、膨らみで解る。が、佐助は不審げに眉を寄せた。
膨らみが動かない。膝を立てた体勢のまま、固まっている。

「寝てるの」

しばらく待ったけれども、返事は返って来ない。
いつもなら罠のひとつやふたつ作動しているか、そうでなければ小十郎自身が斬りかかってくるかしてもいい頃だが
一向にその気配がない。佐助は膝を突いて、こじゅうろうさん、と布団の膨らみの名を呼んでみた。
矢張り返事はない。
佐助はそのまま躙り寄った。
小十郎は首だけ佐助と反対方向に傾けて眠っている。そちらに回り込み、ほおにそうと触れてみた。そして目をちら
りと見開いた。熱い。周りの空気は切り裂くようにつめたいのに、小十郎の肌だけ異様に熱をはらんでいる。
そういえば寝息も、心なしか荒いような気がする。小十郎さん、と佐助はまた小十郎を呼んだ。
閉じられていた目が、ゆるゆると開かれていく。
夜に同化している目に、おのれの姿が移り込んだのが解った。

「さる、」

小十郎の口から、音がこぼれた。
が、途中で途切れる。虚ろな目が佐助の顔からずれて、再び閉じられた。細く長い息がそれに続いて吐き出され、あ
ほらし、という声が被さる。嗚呼、と掠れた声で呻いてから小十郎はてのひらで佐助の手を払った。

「阿呆、くせェ夢だな、おい」
「夢じゃないよ」

払われた手で、小十郎の手首を掴む。
鬱陶しそうな視線が佐助を見上げる。それににいと笑みを浮かべてやると、益々小十郎の顔が歪んだ。
顔を近付け、見せつけるように手首に口付ける。久し振り、と笑ってやると、返ってくるかと思われた悪態の代わり
に熱い息が佐助の耳にかかった。矢張り風邪でもひいているらしい。
握った手首からは、とくとくと鼓動が伝う。

「熱があるね」

額にかかった髪を掻き上げて首を傾げると、小十郎がすうと目を閉じる。
冷えたてのひらが心地良いらしい。するりと額から首もとに手を滑らせると、その心地よさを追うように小十郎が首
を竦め、手の甲にほおを擦り寄せる。喉の奥で笑ってから佐助はもう片方の手も寄せて小十郎のほおを包んだ。
ゆるゆると小十郎の目が開く。
ゆめか、とまた言う。

「夢じゃないって言ってンでしょうに」
「生々し、い、夢だな」
「ま、夢でも良いですけどね」

くつりと笑って、軽く口付ける。
かさりと乾いた感触と、熱が直に伝わる。ぞくりと背筋が震えた。
小十郎はぼうと歪んだ目で佐助を見上げ、確かめるように右手をほおに滑らせてくる。こそばゆい感触に首が思わず
竦められたが、佐助はそのまま小十郎のしたいようにさせた。大きなてのひらに触れられると、驚くほど心地よく、
そのまま眠ってしまいたくなる。
さるとび、と小十郎の口が動いた。

「なんですか」

笑いながら、ほおに滑る指を一本口に含んだ。
小十郎はそれにも何の文句も言わない。熱があるって良いなぁ、と佐助は思った。
形の良い爪と、ところどころに出来た指のタコの感触を舌先で味わう。小十郎の眉が寄る。佐助は笑った。
不快で寄った眉間のしわではないことは解りきっている。あんた微妙なところが感じやすいよな、とつぶやいて別の
指をまたくわえて、舌でなぞっていく。節を甘く噛んで、指の股を舌先で抉る。
小十郎の息が上がっていくのを見下ろして、佐助はふと指を離した。

「あぁ―――――っと、悪ぃ、調子乗ったわ」

赤らんでいるほおを撫でて、眉を下げる。
熱があって抵抗できない相手に盛るところだった。慌てて体を退こうとすると、逆にぐいと腕を掴まれる。
驚いて目を見開くと、小十郎が荒い息で身体を揺らしながらこちらを見上げていた。
ゆめだろ、と小十郎はちいさく笑んで吐き出した。

「だったら俺の思い通り、に、なりやがれ」
「は、」
「さるとび」

小十郎は佐助を呼んだ。
佐助はそれに吸い寄せられるように身体を近づける。
さるとび、と小十郎はまた言う。小十郎の声はおそろしい。なにかしら、佐助の身体の一部をごっそりと抜き取って
いく。熱に浮かされて掠れた声など、とりわけ質が悪い。例え毒だと解っていても呑まずにはいられない甘露のよう
な響がある。元より佐助はそれに逆らう気はない。

顔を近づけると、小十郎がすこしだけ首を持ち上げて口付けてきた。

佐助が目を見開くと、ぐいと首に重みがかかる。
小十郎の腕が回されたらしい。引き寄せられ、深く唇が重なる。
驚いている間にぬるりと舌が入り込んできて、思考が一緒に溶けていった。
小十郎の顔の両側に肘を突き、そのまま覆い被さるようにしてかぶりつく。首の後ろで組まれていた小十郎の手は、
いつの間にか佐助の髪の中に移動していた。耳先をくすぐり、やわらかい髪を指に絡め、押しつけてくる。口付けた
ままに佐助は喉をくるりと震わせ、尚深く小十郎に沈む。
ひとしきり舌を絡めてから、唇を離した。

「は、ぁ、あ」

息も絶え絶えに小十郎がだらりと弛緩する。
佐助も負けぬほど息を荒げながら、笑みを浮かべたまま小十郎のほおを撫でた。それにもひくりと小十郎の身体が反
応する。唇から飲み込みきれずにこぼれた互いの唾液を指先で拭って、佐助は首を傾げて目を細めた。
ねえこじゅうろうさん、と身体をずらして完璧に小十郎にのしかかって問う。

「あんた、どうしたのさ今日は」
「ぁ、あ、なに、が」
「積極的だし、なんか――――いつもより、」

佐助は言葉を止める。
それからふと身体を起こして、後ろに手をやった。

「―――――――ッ、ぁ、は」

小十郎の身体が震えて、それから喉が仰け反って顕わになった。
佐助は目をしばらくの間見開いていたけれども、ゆるゆると細め、それからにんまりと人の悪い笑みを浮かべた。
手は後ろにやったまま、身体を屈め小十郎に視線を合わせる。

「小十郎さん、あんた」

ひとりでしてたでしょ。
小十郎は眉を寄せて、答えない。
佐助は撫でていただけだった小十郎の性器の膨らみを、布団越しにきゅ、と握る。

「ぁ、くッ」
「熱あんのに、淫やらしいねえ」
「煩、ェ」
「はいはい」

かしこまりました、と佐助は手をどけ、代わりに小十郎の足の間に膝を擦り付ける。
は、と感極まったような息が小十郎からこぼれる。既に随分勃ち上がっていた小十郎の性器は膝で擦り上げるよう
にすると布越しでも解るほど熱をはらみ、ひくひくと震えた。口付け如きでこうなる筈もない。先ほどから持ち上
げられてこない利き腕の筈の左は、そちらに回っていて出すに出せぬのだろう。
佐助は舌先でぺろりとおのれの唇を舐めた。

「これはあんたの、夢ですからね」

お気に召すまま、なんでもしましょう。
どうして欲しいですか、と佐助は笑い声と一緒に問うた。









































起き上がれぬほどの熱が出たのは、久々だった。
政宗がまだ梵天丸と呼ばれていた頃に、冬に城を抜け出し勝手に馬で何処かへ行ってしまい、それを追った先
で氷り付けの湖の上で遊んでいたら氷が割れ、あわやというところを救った時に真冬の水泳をした翌日以来か
もしれない。あの時はほんとうに死ぬかと思った。
それほどではないにせよ、今も小十郎は動けずに居る。
身体がやたらに熱いくせに芯が冷え切っていて、節々が痛い。きしきしと骨が軋む音がするし、喉が痛くて声
が出ない。政宗が何度も来ては「年だな」と言ってはすこし気まずげに「悪かったな」と語尾を濁して帰って
行くのもなかなか相手が出来ない。天井が回転しているように見えるのに至っては、もう処置の仕様がない。

「働き過ぎです」

ことん、と枕元に白湯を置いて幸が言う。
年々不貞不貞しくなっている赤毛の娘は、小十郎の額の汗を拭ってすこしだけ目を細めた。

「神様が『休め』と言ってます」
「そう、かよ」
「私と弁天丸と十助も言ってます、それから政宗様も」

休んでください。
幸の顔はあまり変わらない。
ひとに言わせるとそれは小十郎にそっくりなのだそうだ。おのれでは良く解らない。似ているところなど目の
色だけだろうと思うが、あれとおんなじいろの髪の男に言わせると「瓜二つ」らしい。
幸は大きな目を細めたまま、小十郎の顔を覗き込む。

「母上」
「―――――な、んだ。移るぞ。早く退け」
「もうすこし、お待ち下さい」
「は、」
「あと二日」

ふつかです。
ふつかまてば、

「来ます」
「なにが」
「それは計画上言えません」

珍しく幸は笑んだ。
ちいさなてのひらが、ひたりと額に触れる。
ゆっくり休んでください、という声と一緒に意識が遠のいた。
それからしばらく寝所には幸しか来なくなった。弁天丸と十助は来ない。どうしたのかとも思ったけれども、
来たら来たで十助は煩いし弁天丸は鬱陶しい―――――見目は政宗に似ているのに、性根のほうは真田のしの
びに似てしまったこどもは、あわあわと慌てて始終落ち着かない―――――ので、心配はしているのだろうが
それを顔に出さぬ術を既に得ている幸が確かに看病にはいっとう適していた。
寝所は静かで、雪が降る音しかしない。

寝込んで三日目の夜、小十郎はその音で目が覚めてしまった。

身体を起こすと、すこし軽くなっている。
まだ頭はすこしふらつくし、芯が冷える感触も相変わらずしているが、大分良くなったらしい。節々の痛みは
消え、絶え間なかった吐き気も無い。これなら明日には起きられそうだと小十郎はしろい息を吐き出した。
外は雪が降っているようで、月のひかりは無い。音だけがする。その音は表現するのが難しい。目の前に降っ
ている雪すらない状態で、けれどもそれがそこに在ることだけが解る。音と言うよりは、気配やもしれない。
兎も角小十郎は目が覚めてしまった。
寝ようにも、日中もずっと眠っていたせいで眠れない。
寝返りを何度か打ってみたが、刻々と時ばかりが流れていく。ここでしっかり眠っておかないと、明日も本調
子というわけにはいかなくなる。小十郎はぎゅうと目を閉じた。眠りはちょろちょろ動き回って一向に小十郎
の腕の中に戻ってこない。
目を開く。ほう、と息を吐く。
動いていないせいで身体が眠りを求めていないのだろう、と思った。では何か動くか、と言えば寒いのにこの
布団から出ることなど考えたくもない。小十郎は眉を寄せ、それから妻を別室に移したことを後悔した。
寝込んでから三日、その前も忙しくてろくに寝ていない。誰かと身体を合わせることなど尚更していない。ち
いさく舌打ちをして小十郎は呻いた。
意識すると、身体の疼きが殊更際立った。
妻が眠っている座敷はそう遠くないが、夜中にその為だけに忍んで行くような不格好な真似はとうてい出来な
いし、そもそも面倒でする気もない。それに何かおのれから行動するのは億劫だった。まだ身体は怠い。
小十郎はしばらく考えてから、膝を立て、するりと寝間着の布越しに性器に触れた。

「――――――――、は」

鈍い刺激が身体を駆け上ってくる。
下帯を緩め、さらと解けた布を寄せて、未だ勃ち上がってはいない性器により近く触れる。寝間着の裾をすこ
し乱して、左手だけ差し込み直に触れると、長い間切り忘れていた爪の先がちりと性器を掠めて思いのほか強
い刺激がぴりりと走る。小十郎は目を細めた。
こんなことをするのは随分阿呆らしい。
が、実際問題相手が居ない夜半に疼きを止めようとすればこれしかない。
面倒臭さと怠さと、微量の背徳と、それから生理的な欲求を煮詰めながら小十郎はそのまま義務的に手を動か
した。ゆるゆると根本から撫で上げ、先端を抉り、双袋をぐいと乱暴に揉んでみる。断続的に射精感が襲うが、
それは決定打にはならない。支えずとも勃ち上がった性器は、それでもまだ濡れてはいない。
竿を扱き上げながら、小十郎は荒い息の中でふと思った。

「あァ」

しくじった、と眉を寄せる。
ここで精を吐き出したとして、拭くものがない。
懐紙もなければ手拭いもない。手水に行くのは面倒臭い。そのまま吐き出して、疲労のままに寝るのも無くは
ないが、明日一番にこの座敷に来て着替えを持って行くのは誰でもなく幸である。
そこまで考えて、小十郎の気は一気に萎えきった。
元々阿呆らしいと思っていた上に、怠さと熱で手が思うように動かないのももどかしい。面倒なのは気が逸れ
たのに身体のほうが一切その気を失っていないところだけれども、小十郎はぎゅうと目を閉じた。
娘に自慰の痕跡を知られるくらいならこのまま寝たほうが幾らかましだ。

無理矢理眠ってやろうとしたところで、障子がからりと開いた。

聞き覚えのある低い声がそれに続いた。
小十郎は驚くよりも先に、あァいつの間にか眠っていたのかと、そうぼうと思った。
聞き覚えのある声の主は、先頃冬の入り口で「春までは来ねぇから」と吐き捨てて行ったばかりである。のこ
のこと冬の真ん中に訪れることが出来るような男なら良いが、小十郎が知っているその男はそういう男ではな
かった。全てに言い訳と理由と逃げ道を必要とする男だ。そんなことは出来はしまい。
では要するに、これは夢である。
小十郎さん、という声に目を開くとそこには矢張り見知った顔があった。
触れられると、ひんやりと冷たい。それで小十郎はこれは夢だと確信した。小十郎が知っている男の肌はいつ
でもひどくぬるまったく、こんなふうでなかった。夢なのだ。猿飛佐助の肌がつめたい。
都合が良い夢だな、と佐助に額を触れられながら思った。
佐助の指の動きがひどく心地良い。
急に眠れそうな気がするほどに心地よく、それでもそれは他の疼きもたたき起こした。

「どうして欲しいですか」

夢の中で、佐助が問う。
小十郎はぼんやりと赤い目を見上げながら、悦くしろ、と熱い息と一緒に吐き出した。








































既に濡れている性器を口に含むと、堪えかねたような声が小十郎から上がった。
佐助はちいさく笑みを噛み殺し、口をすぼめてこぼれ始めた小十郎の精を吸い上げる。苦味が口いっぱいにひ
ろがったけれども、視界の端にある小十郎の爪先が布団を抉るのがひどく気持ちの良い風景なので構わず佐助
はそれを続けた。双袋を揉みながら、張り詰めている脇腹にも手を伸ばす。

「ぁ、はぁ、ふ、ぅ」

小十郎が声を上げる。
普段なら噛み殺すそれが、今夜に限ってはひどく簡単に零れていく。
どうしたのかとちらりと佐助は思ったけれども、勿論それが嫌なわけではない。むしろ普段は地を這うような
低音が高く掠れる様は、おのれでも趣味がどうかしていると思わないでもないが扇情的にすら見える。
肉の無い、固い肌は普段よりも熱く、それも佐助を喜ばせた。

「小十郎さん、悦い?」

緩く扱けばとろとろとだらしなくしろい液体をこぼす性器に栓をするように親指で押さえて問う。
小十郎はぼうと目を虚ろにさせて、伸び上がって口付けてきた佐助にのろのろと視線を向けてからこくりと頷
く。佐助はそれにへらりと笑い、再び口付け、それから耳にそれを移した。舌で耳の中を抉ると、ひくりと身
体が蠢く。それが楽しいので延々とすると、ぐいと髪を引っつかまれた。
おい、と小十郎が呻く。

「おま、え」
「なんでしょ。痛ぇンだけど」
「ゆめ、なら」

夢らしく、
俺の思い通りになれ。

「そこじゃねェんだよ」

佐助はくるりと目を丸めた。
それから吹き出して、けらけらと笑いながら小十郎の肩に額を押しつけた。
小十郎が「重い」と文句を言う。佐助はひいひいと息を荒げながら、起き上がって小十郎を見下ろした。

「そいつぁ失敬。仰せの通りに致しましょう」

ひょいと頭を下げて、再び小十郎の足の間に潜り込む。
焦らすのは止して、達する為に最短の動きを指で加えていく。舌で先端を抉り、握り込むとすぐに小十郎は達
した。しろい液体は勢いよく飛び出して、佐助のほおにもひたひたとぶつかる。それを舐め取って、懐紙で手
を拭ってから佐助は小十郎の髪を掻き混ぜた。にいと笑んで、首を傾げる。

「お気に召しましたかね」

呼吸を整える為に上下する小十郎の胸をゆるゆるとなで下ろす。
小十郎の顔は朱く染まっていて、呼吸は荒い。佐助の触れている胸はことことと姦しい。普段ならばここまで
身体は敏感ではないので、矢張りこの反応は熱のせいなのだろうが、佐助は緩んだ顔を直そうともせずにうっ
とりと小十郎の髪を梳いた。汗でしっとりと髪は濡れている。その熱を生み出したのが誰でものなくおのれな
のだと思うと、たまらない優越感でぞくぞくと背筋が震えた。
しかしこれ以上は目に毒だなと佐助はひょいと体を退こうとして、

「え」

ぐいと再び腕を掴まれた。
引き寄せるほどの力は無かったらしいが、矢張り小十郎が腕を掴んでいる。

「え、なに、どうしたの」
「あほ」
「は、」
「召して、ねェ」

まだだ、と言う。
佐助がぼうと呆けた顔をしていると、小十郎が舌打ちをして弱く足を蹴った。
こんなんで放っておく気か、と続く。佐助は瞬きをして、それから口をてのひらで覆った。ああ、と無意味な
声を吐き出してから、かすかに熱くなった耳を擦って口を歪める。
この好き者、と呻く。

「熱あんだから、寝てなさいよ」

息を吐いて吐き捨てる。
小十郎は虚ろな目のまま、首を振った。

「もう寝て、る」
「だから夢じゃねえって」
「夢だろ」
「こんな生々しい夢あってたまるかい」
「ゆめだ」
「なんで」
「おまえ」

居るじゃねェか、と言う。

「俺に、都合が、良い」

そんなこと普通じゃ有り得ねェ、と小十郎は長く息を吐き出しながら結んだ。
佐助は呆れて、それから顔が熱くなり、次いで下腹の辺りがぐんと重くなったのにうんざりした。明日になっ
たらどうなるかなあ、とすこしだけ、そういうことが頭を掠めた。夢だと思い込んでいる小十郎は、こんなに
今誘い文句の大盤振る舞いだけれども、明日になって横に佐助が寝ているのを見たらすぐさま斬りかかってく
るに決まっている。今のことを覚えていたらきっと佐助の命は星になって天に昇る定めだろう。
佐助は最上川より長い息を吐き出して、首を振った。

「さると、び」

小十郎が裾を引いてくる。
嗚呼、と呻いてからぎゅうと佐助は小十郎に抱きついた。

「――――――――俺は悪くねぇからな」

つぶやいて、眉を寄せる。
好いた相手にここまで誘われて、その気にならなかったら男として終わっている。
折角熱があるから遠慮しようとしたのに、と続けようとしたら、背中に小十郎の腕が回ってぎゅうとしがみつ
かれたので、佐助はいろんなことを明日に放り投げ、取り敢えずは十年に一回だって無いであろうほど真っ直
ぐに求めてくる目の前の男を「悦く」するのに専念することにした。

 




























おわり
 




小十郎のひとりえっちが書きたかったって正直に言ってもいいですか(殴
私はどうも佐助に奉仕させるのが好きなようです・・・だって・・・似合うじゃないか。


ちなみにタイトルはセーラー○ーンのOPから取ってみました。
haloさんに前のと一緒に押しつけます。ぎゅっ。


空天
2008/03/30

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