佐助は小十郎にキスをしながら、手のほうでは彼の着ているものを脱がし出しました。
小袖をはだけると、厚い胸板があらわになります。佐助はてのひらでその感触を確かめるよう
に、するすると肌を撫で始めます。すると小十郎が駄々を捏ねるように首を振って、佐助の唇
を振り払いました。
「よせ、あほう」
佐助は目を瞬かせ、それからにんまりと笑みを浮かべます。
「きもちいいの」
「ちがう、」
「きもちいいンでしょ?」
「ん、―――んっ」
自由になった唇で、佐助はちゅう、と小十郎の胸を吸ってみます。
小十郎は目を閉じて、文句を言う口も一緒に閉じました。佐助の肩にかけていた手を自分の口
に押し当て、必死に声を殺そうとしています。小十郎が抵抗しなくなったので、佐助は思うま
ま、彼の胸にキスを降らせました。ちゅ、ちゅ、と、洞窟の中に恥ずかしいくらいかすかな音
が響きます。それに合わせて小十郎の吐息も、どんどん荒くなっていくのでした。
「ふ、ふ、―――うあ、あァ、ッ」
そして佐助が胸の天辺に啄むように吸い付くと、とうとう小十郎は高い声をあげてしまいまし
た。小十郎ははっと目を見開きました。でももうその声は洞窟に響き渡ってしまっています。
佐助はもう嬉しくなってしまって、まるで赤ちゃんみたいにそこを強く吸い上げました。そし
て口に含んでいないほうは指で押し潰し、小十郎がもっときもちよくなれるように、その二つ
の突起を丁寧に弄ってあげるのです。
するとますます小十郎は高く、きもちよさそうな鳴声をあげるのでした。
「や、―――あァ、んん、―――ん、あぁ、はァ、あ」
「きもちいい、片倉さん?」
「ふあ、ァ、くう、ん、ん―――ッ、よせ、あほ、きつねやろう、っ」
あんまり丁寧にしすぎたのか、途中で小十郎が佐助の髪を強く引っぱって止めさせてしまいま
した。佐助はもっと丁寧にしたってぜんぜんいいくらいだったのですけど、小十郎はいつの間
にかまた泣いているし、中途半端に脱ぎかけた袴の中央はもう濡れています。これ以上我慢さ
せると後でどんな目に合うか解ったものではないので、佐助は大人しく最後にキスをしてから、
胸を弄るのをやめてあげました。
代わりに袴の盛り上がった部分を、そっとてのひらで包んでみました。もうそこはすっかり固
く形を持っていて、その熱さといったら火傷してしまいそうなくらいです。そしてそこは、佐
助が布越しに触れただけなのに、ひくついて、とろとろと溶け始めるのでした。
「あ、―――」
感じ入るように間延びした声を小十郎があげました。
佐助は濡れた布をそのままきゅっと握り込みます。天辺を親指でぐるぐると撫でてあげると、
小十郎の額が佐助の肩にすとんと落ちてきました。
ふわふわと、大きなピンク色の耳が佐助の目の前で揺れています。
佐助は思わずその耳を口に含みました。いつもより熱を持った、血管が透けてみえる部分に軽
く歯を立てると、重なっていた小十郎の体が一際大きくふるふると震えました。
小十郎は佐助の首に縋るように、か細い声を切れ切れにあげます。
そして佐助は布越しに、小十郎の熱が弾けたのを感じ取りました。
「やァ、あッ―――あ、あァ―――ァ、ん」
いつもは低い声が、甘ったるく高くなり、佐助の鼓膜を揺らします。
その声があんまりいやらしいので、佐助のほうまで背筋が震えてしまいました。小十郎は佐助
の肩にぐったりと顔を埋めています。絶え間なくこぼれる熱のこもった息は、それだけで佐助
を誘うための匂いのようなものを持っているようです。佐助は小十郎の顎に手を添えて、また
彼の好きなキスをしてあげました。
軽く唇を舐めて、それからきれいに並んだ歯にノックするように舌を這わせます。
小十郎はキスが好きです。
でも彼の好みはとても細かいので、きちんと彼の求める物を、求めるように与えてあげなくて
はいけません。あまり激しすぎるのを好まない小十郎には、あくまでもキスはやさしく、そう
して出来るだけ甘ったるなくてだめなのです。
佐助がやさしくキスを繰り返すと、そのうち小十郎のほうから舌を絡めてきてくれます。思わ
ず嬉しくって強くそれを吸い上げたくなりますが、佐助はぐっと我慢しました。ここで焦って
はいけません。佐助は小十郎の舌に寄り添うように、そっと自分の舌を絡めました。
「ん、ん」
鼻から抜けるような声がこぼれます。
佐助はキスをしたまま、小十郎の吐き出した熱をたっぷりと指にすくい取ると、それを彼の後
ろへと擦りつけました。きつく閉じたその場所は、でも佐助が触れるとひくひくとうごめいて、
まるで何かを待っているかのように熱を持ち始めます。なんていやらしいんだろう、と佐助は
くらくらと眩暈を感じながら思いました。小十郎の、発情期の兎の体ときたら、もうその全身
でひとを誘っているようなのです。
佐助はまずは指を一本、小十郎の体内に差し込みました。
「あ、」
「痛い?」
唇を離して問いかけると、小十郎はぶんぶんと首を振りました。
大丈夫なようなので、佐助は浅い部分をぐるぐると掻き混ぜるように指を動かしました。小十
郎の体の中は、まるで佐助の指に吸い付くようにうごめいています。
指を二本に増やすと、小十郎がきつく佐助の首に抱きついてきました。
次いで何かに堪えるように、小十郎は佐助の服に噛み付いてきます。佐助は首に押しつけられ
た小十郎の頭を撫でてやって、二本の指で彼の体の中をゆっくりと慣らしていきました。おな
か側の壁に、なにか出っ張りのようなものがあります。それをやさしく押してやると、小十郎
の体が目に見えて大きく震えだして、そこが一番きもちいいのだと手に取るように解るのでし
た。でも小十郎は佐助の服を噛んでいて、声を出そうとしません。
「声出したほうが楽なんじゃないの」
佐助は親切のつもりで聞いてやったのですけど、小十郎はそれを何か、からかいの文句である
ように受け取ったようで、噛む場所を布から皮膚へと変えてきました。鋭い痛みが首筋に走り
ますが、佐助は困ったように笑っただけでした。
ぐっと強く凝りを押すと、痙攣したように小十郎が固まりました。
「ッ、―――」
「あらら」
こぽり、と再び小十郎の熱が溢れ出します。
佐助は小十郎の体の中から指を引き抜きました。すこし体を離してみると、小十郎はぐったり
と力なく、洞窟の壁にもたれかかりました。もう閉じるだけの力も残っていないのか、足はだ
らしなく開かれたままです。とろとろと溶けた小十郎の熱は、さっき吐き出したばかりなのに
まだ勃ち上がったまま、苦しげに震えています。
佐助はその先端を、弾くように軽く触れました。
「くう、んッ」
犬みたいに小十郎が鳴きます。
「ね、片倉さん、挿れていい?」
膝を抱え込んで聞いてみますが、もう小十郎はそれに返事をすることもできないようでした。
いつもは鋭い目もとろけきって、頼りなげに佐助を見上げています。佐助はぞくぞくと背筋に
震えが走るのを感じました。
いつだって誰よりもかっこいい兎さんが、縋るように俺を見てる!
あんまり嬉しすぎて、佐助は思わずそのまま自分の熱を小十郎の体の中に埋め込んでしまいた
くなりました。でもぐっと我慢して、袴をくつろがせ、もう固くなった熱を小十郎のとろとろ
溶けた後ろへすりつけます。ひくひくうごめく入り口は、まるで佐助が入ってくるのを今か今
かと待ちわびているみたいに感じられます。
小十郎は、苦しげに目を閉じました。
佐助は小十郎の膝にキスをして、ぐっと腰を小十郎に押しつけます。ずるりと佐助の熱が小十
郎の中に入っていくのと一緒に、小十郎が耐えられないというように首を反らせました。
「あ、あ―――あァ、ァは、は」
間延びした声を出して、壁に頭をすりつけます。
小十郎の長い指が壁をかきむしっているのを見て、佐助はやれやれと息を吐きました。溶けて
しまいそうなほど熱い小十郎の体を抱き寄せて、石をかきむしって血の出ている指を咥えてや
ります。すると、小十郎の耳がぴんと立ちました。
わざと水音をたてて舐めてやると、閉じられた目からほろほろ涙がこぼれ出します。
「ちゃんと俺の肩に掴まンなって」
「ふう、う、ぅ」
「辛い?」
言葉はありません。
ただふるふると首が振られたので、佐助は小十郎の腰に手を回し、半端に埋まっていた熱をぐ
っと奥まで押し込みました。やけどしてしまいそうなくらい熱い体内が、佐助の熱をきゅっと
締め付けてきます。佐助は眉をひそめ、搾り取られそうになるのを必死で堪えました。
お互いのおなかで擦られて、小十郎の熱はまた溶け始めました。そして溶けきった小十郎の体
の中は、もっともっとと佐助の熱を締め付けます。佐助は口元を歪め、ほつれた小十郎の前髪
を掻き上げました。小十郎はそんな動作ひとつにもなにか感じ取ってしまうようで、ひくりと
首を竦めてしまいます。佐助は困ったように歪んだ笑みを浮かべ、ほおに伝う涙を目元まで舐
め上げました。
「や、ァ、あ」
「泣かないでよ」
それが生理的な涙だということは、佐助にもよく分かっています。
でも好きな人の涙を見るのは悲しいものです。ましてや、べつに小十郎は佐助のことが好きだ
というわけでもないのですから。
ほんとうに嫌で泣いていないとも、言えないのです。
佐助は小十郎の涙を両方とも拭ってやって、伺うように顔を覗き込みました。
「片倉さん、こういうの、いや?」
「―――ッ、は、」
小十郎が驚いたように目を見開きました。
もともと赤かった顔をもっと真っ赤に染めて、佐助を恨めしげに睨み付けています。何を言っ
てるんだ馬鹿野郎、と、何より雄弁なその二つの目が佐助に訴えかけています。
もちろん、佐助にだってよく分かっています。
だって小十郎の体は隅から隅まで蕩けきっているし、体の内側まで佐助を離さないようにぎゅ
うぎゅうと誘い込んでいるのです。小十郎が嫌がっていないのは、それだけでもとてもよく分
かるのです。でも佐助は、不安なのです。
だって小十郎はいつも、何も言ってはくれないのですから。
「ねえ、俺がこのまましちゃってもいいの。嫌なら止めるから」
ほんとうに小十郎もしたいと思っているのか。
佐助はそれが気になってたまらないのです。
小十郎とこうして体をつなげるのは佐助だってほんとうにきもちがよくて、幸せです。でも佐
助はそれだけがしたいわけではないのです。小十郎と、ほんとうに仲良くなりたいのです。だ
から彼の辛いときにつけ込んでしまうようなことはしたくないのです。
小十郎は荒い息を吐き出しながら、佐助の顔を見上げています。睨み付けているのかもしれま
せんが、潤みきった目ではそれもよく解りません。何か言おうと薄い唇が開きましたが、何も
言わないうちにまた閉じてしまいました。
佐助が悲しそうに眼を細めると、ぺし、と何かが顔に当たりました。
「え」
「―――っせ、あほ、」
ぺしぺし。
顔に当たるのは何かと思えば、小十郎の耳なのでした。
ぽかんと口を開いて小十郎を見下ろすと、耳をぱたぱたと佐助に叩きつけている兎は、うう、
と犬のようにうなり声をあげてこちらを睨み上げています。
ばかやろう、と小十郎は言います。
同時に、佐助の腰に太い足が絡みつきました。
「や、なら―――ァ、あ、こんなに、なるか、ッ、」
死ね。
狐野郎。
とびきり甘い声で、小十郎は佐助を呪いました。
佐助は真っ赤になった顔をてのひらで包み、まじまじと自分の体の下に居る兎を凝視しました。
小袖もほとんど腕に引っかかっているだけで、袴はもう其の辺りに放ってあります。何度も漏
らしてしまった熱の名残は足やおなかにこびりついていて、汗と相まっておそろしくいやらし
くてらてらと体を彩っています。佐助はうう、と小十郎の真似をするように唸りました。
これで欲情しなかったら、雄ではありません。
「後で文句言わないで、くれよな、ッ」
「ひ、ァ―――はあ、ん、んん」
佐助は一言悪態を吐いてから、小十郎の体を揺さぶり始めました。
小十郎の腕はいつの間にか佐助の背中に回っています。足を抱えて深く浅く体を抉ると、もう何
度目になるか解らない熱を、小十郎が放ちました。
でもまったく小十郎は満足していないようで、自分から佐助の唇に噛みついてきます。佐助は噛
みつき返しながら、小十郎の足を左右に大きく開いて、深いところを抉るようにぐりぐりと腰を
押しつけました。小十郎の悲鳴が、佐助の口のなかに消えていきます。
熱を出し入れするたび、ぐちゅぐちゅといやらしい音が洞窟の中に響き渡ります。
「ァ、あ、あ、あ、あは、ァ、はァ、んッ」
もう、意味のある言葉など小十郎からは出てきません。
佐助に揺さぶられるのに合わせて、高い声を漏らすばかりです。
佐助は小十郎ができるだけ長くきもちよくいられるように、自分は彼の中に入れた熱を溢れさせ
ないよう、一生懸命に堪えながら腰を動かしました。
その間に何度か小十郎はまた熱を放ち、とうとう最後には透明なものしか出ないようになって、
それでも佐助の体に縋り続けます。佐助は小十郎の体を自分の足の上に抱え込み、縋り付いてく
る頭を撫でてやりました。
ピンク色の耳にキスをして、ほう、と息を吐きます。
「―――発情期じゃないときにも、こうしてくれると嬉しいンだけどなあ」
ほとんど意識を失う寸前の小十郎には、きっと聞こえていなかったでしょう。
佐助の独り言は、さみしそうに洞窟の中に響いて、消えていきました。
おわり
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この間原稿状況を考えてみると、来年の六月までエロを書けないことが解ったんです。
で、さらによく考えてみると、自分小十郎をあんあん言わせたのって雀本以来じゃない
の?とふと気付いたんです。
つまりエロが書きたかったんです。
すみませんでした。
空天
2010/12/20
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