・・・童話でBASARA・・・









あるところに赤ずきんちゃんと呼ばれているそれはかわいらしい男の子が居ました。
他には虎の若子とか日本一の兵とかも呼ばれていました。自分で言っているという話もあります。ぶっちゃけ赤ずきんちゃんは真田 幸村でした。
赤ずきんちゃんはお母さんとふたりでちいさな家に暮らしていました。
ある日お母さんが赤ずきんちゃんに言います。
森の奥で一人暮らしをしているおばあさんに葡萄酒とお菓子を届けるようにと、赤ずきんちゃんにバスケットを渡します。

「いい、だん・・・赤ずきんちゃん」
「なんだ佐助」
「佐助じゃねーっつーの。設定を読んでください」
「・・・(がさごそ)『なあにお母さん』」
「寄り道しちゃ駄目だよ。甘味処とか、買い食いも駄目。つーか財布渡しなさい。あと拾い食いとか、強そうな人が居てもついてい っちゃ駄目。興奮してバスケット壊すとかもナシ。脇目もふらずに大将のとこまで行って、バスケット置いたら一目散に帰ってきな さい。いいね」

お母さんはとても心配性でした。
赤ずきんちゃんは首を横に振ります。

「それでは腹が減ったらどうするのでござる!」
「台本と違うことを言うな!しらねーよ我慢しろよ!」
「佐助だって台本と違うでござる!どこにも拾い食いとか書いてないでござる!」
「馬鹿、アドリブだよ。俺様みたいな一流の俳優にはそういうのも許されるんだよ」

異様に口の回るお母さんに言い含められ、不満げな赤ずきんちゃんはそれでも家を出ました。
かちゃんと閉まるドアを見届けた後、お母さんはまとっていた割烹着を脱ぎ捨てて、てきぱきと別の服に着替えます。迷彩柄のそれ は、どこから見ても忍装束でした。帷子のうえにそれを着て、お母さんは家を出て先を行く赤ずきんちゃんを追います。木の上とか から。
お母さんは、忍者でした。

「・・・あのひとぜってー寄り道するもんなあ」

息を吐きつつお母さんは赤ずきんちゃんに気づかれないよう、尾行を続けます。
しばらく行くと道が開け、花畑が広がっていました。赤ずきんちゃんはそこを一瞥し、特に気にすることなくスルーしました。赤ず きんちゃんは花より団子のほうがすきなようです。お母さんもそれは分かり切っているようで、では先回りでもするかと思っていた ところ、

「Hey!真田幸・・・赤ずきんじゃねェか」

森の中からごそごそと、狼さんが顔を出します。
右眼に眼帯をした狼さんは、赤ずきんちゃんに近寄ってちゃきんと爪を剥きました。赤ずきんちゃんも真剣な顔になり、バスケット を地面に置いて腰から愛用の槍を抜きます。バスケットは置いたというより投げられたので、地面と接触するときがちゃんといやな 音がしました。ボトルが割れていないことを祈るばかりです。

「ここで会ったのも何かの縁・・・お手合わせ願おう!」
「Han!いいねぇ、まさかこんな所でPaytyが出来るなんざァ思いもしなかったぜ」

ふたりは戦る気満々です。
お母さんは木の上でそれを見ながら深く息を吐きました。八割方予想はしていましたが、あまりにも予想そのままなのでがんがん頭 痛がします。ワンパターンだな・・・と遠い目をしながら、お母さんは手裏剣を構え、後頭部をこちらに向けている狼さんを亡き者 にしようとしゅたんと木から下りました。
そこでお母さんは、先客に気づきました。
草むらのなかには、ライフルを肩に背負った猟師さんが居ました。お母さんの姿を見て、軽く頭を下げます。お母さんもにこりと社 交辞令の笑顔を浮かべました。猟師さんはとても礼儀正しそうです。世間話でもしようかとお母さんは話しかけました。

「ここらへんに住んでるんですかー?」
「ええまあ」
「そうかー精が出ますねー。あ、もしかしてあの狼狙い?だったら助かるなー。今、俺もあのやろーを殺っちゃおうかと思ってたん だよねえ。ほら、あそこにあほみたいな赤い頭巾の子がいるでしょ。あれうちの旦那、で・・・・」

お母さんの話が途中で途切れます。
猟師さんのライフルが、お母さんの眉間にぴたりと寄っていました。

「なにすんのおおおおお!?」
「てめェが今言った言葉を地獄の底で後悔しろ」

猟師さんの人相が変わっています。
あきらかに堅気の世界の人のそれではなくなっていました。口調も違います。

「つーかあんた猟師でしょ!スナイパーじゃないでしょ!?」
「誰が猟師だと言った」
「え」
「俺は政宗様の護衛で此処にいる」

猟師さんは台本を読んでいないようです。
お母さんは思いました。あ、やばいこの人本気で殺る気だ。
咄嗟に手裏剣でライフルの銃口を横に逸らします。が、猟師さんは何故か腰からすらりと刀を抜きました。もはや猟師さんでもなん でもありません。お母さんは手裏剣で刀を受け止めつつ、ストーリーを忠実にこなそうとするのがおのれだけであることに深く深く 息をつきました。



お母さんが家を出た時点でストーリーが狂い始めたとは思わないところが、お母さんのお母さんたる所以でした。



結局バスケットは粉々になってしまったので、あとでお母さんと猟師さんがおばあさんにお詫びに行きました。おばあさんは、正直 武田信玄だったのでとても元気でした。赤ずきんちゃんと狼さんは今日も元気に花畑を台無しにしながら戦っています。

森は今日も平和です。

めでたしめでたし。









ライフルを佐助に向けるこじゅが書きたかっただけです。











昔々あるところに、白雪姫というそれはそれは愛らしいお姫様が居ました。
白い肌に黒々とした髪。すいませんもう褒め言葉が見つかりません。右眼には眼帯をしていました。要するに伊達政宗でした。白雪 姫はお母さんと折り合いが悪かったので、ある日自ら城を出て行くことにしました。お母さんは鏡に向かって「世界で一番美しいの はだあれ?」と聞いては「秀吉の名前を言わないなんてこの鏡は壊れているのかな!」と鏡を破壊するようなお母さんでした。あれ と血が繋がっているなんて、たとえ設定だとしても白雪姫は虫ずが走るほどにいやです。

「あーせいせいしたぜ!」

清々しい顔で白雪姫は森を歩きます。
しばらく行くと、ちいさな家が白雪姫の前に現れました。白雪姫はノックもせずにドアを開きます。自分の領内なので、すべからく そこにあるものは自分のものであると白雪姫は確信していました。
ドアを開くと、そこには小人が居ました。
七人。

「「「「「「てめェ何者だ!」」」」」」」

みんな同じ顔をしていました。
白雪姫は思わず胸を押さえます。小人たちはみんなちいさな刀を持って白雪姫を警戒しています。頬にすうと一本の切り傷が入って いて、小人なのにかわいらしさの欠片もありません。ですが、白雪姫はそんなことは気にしません。むしろ、だからこそ胸の高鳴り が収まりませんでした。

「・・・So cute・・・!」

白雪姫はちょっとおかしい子でした。
小人たちは、白雪姫がこの国のお姫様だと知ると、刀を収め自らの無礼を詫びました。七人とも非常に礼儀正しいです。さっき見せ たのは対山賊用の顔だったようです。白雪姫はちいさくて怖いこの七人をいたく気に入り、ここで暮らすことに勝手に決めました。 小人たちも白雪姫と話しているうちに、すっかり惚れ込んでしまったらしくここにおいて一切の異論はありませんでした。
しかし、小人たちにはなにか事情があるようです。

「実は」
「悪い女王に逆らって」
「呪いをかけられているのです」
「元は一人の人間だったのですが」
「七人に分けられてしまい」
「この体では城に戻ることも出来ず」
「こうして森に暮らしております」

七人は順々に喋ります。
白雪姫は、その女王があからさまに自分の母親であることに舌打ちをしつつ、ではどうすればよいのかと小人たちに聞きました。小 人たちとの森の生活はとても楽しいのですが、白雪姫はこんな人里離れた場所で一生を過ごすつもりはありません。あわよくばクー デターを起こし、とっとと母親と父親を追放して国をぶん獲るつもりでした。恐ろしい白雪姫です。危険分子です。なので、平気な 顔で母親を殺せばいいのかと聞くと、小人たちはふるふると首を振ります。どうやら、呪いをかけた本人を殺してもどうにもならな いようです。

「隣の国の秘宝であるという、ある宝玉を飲み込めばいいという話はありますが」
「OK!そいつを持ってくれば、おまえら元に戻るんだな!」

俺に任せろ、と言うと、小人たちはまた一斉に首を振りました。

「なりませぬ!」
「そのような危険な場所に」
「政宗様をひとり行かせるなど!」
「なにかあったらこの小十郎」
「腹を切らねばなりませぬ」
「どうか小十郎のことなどお気になさらず」
「女王を倒すことにのみ専念なされよ!」

白雪姫は耳を押さえます。
七人分の小言は、さすがにちょっとうるさいです。
どうしても白雪姫を行かせようとしない小人たちの為に、ある日白雪姫はこっそり夜中に抜け出して隣の国へ向かいました。秘宝と いうからにはきっと国王の元にあるのでしょう。白雪姫はくるくると六本のナイフを回しつつ、城に忍び込みます。白雪姫は殺る気 でした。
国王の寝所の天井を突き破り、すたんとその部屋に降ります。
その時でした。

「・・・・っ!」

しゅん、と音を立てて白雪姫の顔に何かが飛んできます。
咄嗟に白雪姫はそれをかわしますが、次いで五本ほどのくないが続けざまに白雪姫に襲いかかってきました。だだだだ、と音を立て てそれが壁に突き刺さります。ば、と白雪姫が顔を上げると、そこには迷彩柄の服を着た男が天井からぶら下がっていました。

「うちのご主人に何の用?」
「・・・Shit!護衛か」
「あんたどこの刺客か知らないけどね、俺に会ったからには生きちゃあ帰さない、よ!」

しゅたんと床に降り立った男は、手裏剣で直接白雪姫を斬りつけようとしました。
それを二本のナイフで受け止めた白雪姫は、つうとこめかみに汗が伝うのを感じました。正直、非常に危ない状況です。ああ小人を ひとりかふたり連れてくればよかった・・・!と白雪姫が思い始めた頃です。
ふわあ、と大きな欠伸の音がしました。

「佐助?何をしておるのだ」

ベッドの上からごそごそと、ひとりの少年が起き上がります。
白雪姫と男は同時にそこへ視線を向け、そして白雪姫はあ、と声をもらしました。以前何度かパーティで合わせた顔です。たしか、 ここの国の王子だったはずです。王子も白雪姫に見覚えがあったらしく、

「おお!伊達政宗殿ではござらんか!」

と親しげに笑いかけます。
男は首を傾げました。あきらかに白雪姫は暗殺する気満々でしたが、どうやらふたりは知り合いのようです。何故こんなところに居 るのかと問われて、白雪姫は悪びれずに宝玉のことを話しました。男は顔をしかめますが、王子はぽろぽろと涙をこぼし、

「なんと領民思いの城主であろう・・・!其、感動で前が見えぬでござるうううう」

白雪姫は、自分が城主だと説明したようでした。
結局宝玉はあっさり渡してもらえ、それを持ち帰って小人に与えると小人は翌日にはひとりの大男になっていました。くっつく瞬間 を見れなかった白雪姫は非常に残念がりましたが、大きくなった小人、要するに片倉小十郎がとてもとても好みだったのであまり気 にしませんでした。元小人は七人分の小言をひとりで連ねつつ、それでもますます白雪姫に傾倒し、

「あなたさまに何処までも付き従いましょう」

と言います。
白雪姫はもちろんそれを許しました。

白雪姫はその後、大きくなった小人と共に、隣国の助けを借りて見事女王を追放し、クーデターを成功させ、今では隣国の王子と時 々果たし合いをしつつ楽しく過ごしているそうです。


めでたしめでたし。








伊達が白雪姫だったら絶対毒りんごは食わんだろうと思います。
こじゅが7人居るならひとりくらい分けて欲しいです。








同人女なら一度はやっておきたい童話パロ。
赤頭巾ちゃんならえろく、白雪姫ならかわいくなる筈なのにうちのサイトじゃどっちもただのギャグにしかなりません。何故




2007/03/28
空天

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