随分長い時が経ったような気もする。 ただそれはあくまで、あるひとりの―――――この場合はおのれの―――――取るに足らぬ人間の感ずる時の流れで しかない。いろいろなことが変わったような気もする。しかしそれもまた、横を歩く他の者とは決して共有すること のない、ひどく主観的なひとりごとでしかない。第一に、よくよく考えてみればそんなに時は経っただろうか。そん なに多くが変わっただろうか。実際のところ、時は流れたとしても僅かで、変わったものなど取るに足らない。 猿飛佐助は空を見上げた。冬に溶けこみつつある秋の空は、青さが突き抜けている。突き抜けて突き抜けて、そして その青はいっとう上まで舞い上がって行き場を無くす。そういういろを、空全体がはらんでいる。城下の町は活気づ いて、ひとはくるくると旋回し、声は耳を左から右へと通り抜け、舞い上がる砂埃が視界を不明瞭にする。 佐助はひとつ伸びをして、左手で傍らに置いてあった市場で買った食料の入った布包みを持ち上げる。 それからもう無くなって随分経つ右手が、かつて繋がっていた肩にそれをかけた。 雪を厭い雨を請い そ し て 随分前に、佐助はひとりの変わった男と幾度か肌を合わせたことがあった。 そもそも佐助はしのびであって、武士の世の習いである衆の道に足を踏み入れてはいない。無論しのびを占める割合 は圧倒的に男が多く、戦場であれ謀報先であれ、欲を吐き出す対象として男を抱く者もなくもなかったけれども、佐 助はそれを好まなかったし、また求められれば鼻で笑ってやった。それが許されるだけの才と技が佐助にはあった。 陰間のようなことをせねばならぬことも時にはあったけれども、最後までさせてやる前に幻術でも見せてやればそ れで事足りる。だから佐助は、その男と会う前は男と交わることなど考えたこともなかったし、また決しておのれに はそのような機会はないだろうと思っていた。 「それがまぁ、どうしてこうも簡単にあんたとまぐわッちまったかね」 佐助はくつりと笑って、傍らに寝転がる男の口に咥えられた煙管を取り上げる。 不機嫌そうな声が横から漏れ、次いで手が伸びてくる。佐助はそれを避けてむくりと起き上がり、高い天井に紫煙を 吐き出した。しろい煙はしばらくたゆたい、そしてすいと消える。にいと口角をあげてやれば、男は舌打ちを返す。 「それは政宗様に頂いた物だ。おまえ如きが口にしていい物じゃねェんだよ」 「こらぁ大層なお言葉だことだ。あんたは俺をなんだと思ってンだい」 「黙れ、しのび。とっとと返せ」 そう言って、起き上がって佐助の手から煙管を奪った男は名を片倉小十郎という。 男にしてはやや線の細い佐助に比べると、はるかに小十郎の体躯は隆々としている。腕は太く肩は広く、その何処を 見たとしても一部の隙もない筋が全体を覆っている。左のほおに傷がついていて、それはすうと伸びて耳の下でぷつ りと消える。佐助は笑いながらその傷をすいと撫で上げて、小十郎のこめかみに触れた。 それに小十郎は矢張りひどく不快な顔をする。小十郎は佐助に触れられることを好まず、佐助に触れることを好まず、 佐助と目を合わせることすら好まない。佐助もそんな小十郎になんらかの感情を抱くことは特になかった。始めから そうであったから、なにかを期待することもない。 それでも肌を合わせたのは、一言で言えば「間違い」だ。 小十郎が煙管をきゅ、と布で拭って煙管筒に仕舞い込むのを佐助は笑みを浮かべながら眺める。 そんなにそれが大事かい。そう問うてみる。小十郎は答えない。此方を見ようともしない。佐助の笑みは益々深くな る。佐助はこの男の、こういうところが堪らなく気に入っていた。 小十郎は佐助のことをおそらくは、なにか汚らしいものだと思っている。 「ねえ、右眼の旦那」 もう一回しよう。 小十郎の肩に掛かっただけの羽織をぐいと引く。 するりとそれが落ちる。真っ直ぐな背中があらわになる。大小の、切り傷や弾痕や焼け痕が、元の肌を隠さんとする うに隅から隅までそこには満ちている。佐助はうっとりと目を細め、そこへ唇を這わせる。ひくりと皮膚が揺れた。 佐助は喉の奥を震わせながら、傷痕を辿るように舌を動かし、腕を小十郎を閉じこめるように前に回す。小十郎はそ うなると、先程のような温度のない言葉を吐いたりはしなくなる。ただときおり息をこぼし、とろりと蕩け、身を任 せ、そしてそのうちに体を反転させて佐助のこともおんなじようにしようとする。 要するに、片倉小十郎は佐助のことは厭うているけれども、閨の相方は拒まない。 それはきっと佐助でなくともそうなのだろう。男でも見惚れるほどの男ぶりは、そこらの女でも頼まずとも足を開く であろうし、佐助以外の男でもそうする者は居るだろう。それをこの男は拒まない。 だからと言って、この男はそういう悦に弱いわけでも、それに対する欲が強いわけでもない。ただ、そのことはこの 男にとってどうでもいいことなのだ。佐助は薄い唇におのれのそれを重ねながら思う。 片倉小十郎にとっては、主の伊達政宗しかこの世で意味を持つものは存在しない。 一もなく、二もなく、そこにはただひとり、伊達政宗だけがぽつりと存在している。 小十郎は政宗とだけは体を合わせないだろう、と佐助は思っている。どうでもいい相手としか、小十郎は肌を合わせ ない。要するに、伊達政宗以外とならば小十郎は誰でも良いのだ。政宗だけが小十郎にとって特別で、それ以外のも のは等しく小十郎のなかでは「無」でしかない。一も二も、そして百までも、そこには欠片も存在しない。そして小 十郎は、決して主をおのれから離さぬ為にのみ生きている。 佐助は小十郎の肩に刻まれた傷に爪を立てた。 「―――――ッ、ぁ」 小十郎が眉を寄せる。 佐助はくつくつと笑う。 これもまた、主を縛る小十郎の術のひとつだ。 佐助は更に強く爪をそこに食い込ませる。そのうちに血が零れてくる。それと連動して性器を擦り上げると、小十郎 は痛みよりもそちらの刺激のほうに意識を移して息をこぼす。情交の度に、佐助は小十郎の傷をこうやって抉って、 決して消えないようにする。無論、そんなことをせずとも傷は消えない。 小十郎が佐助と肌を合わせるのは、佐助が政宗ではないからである。 では。佐助は小十郎に背筋を撫でられふるりと震えながら思う。では、おのれは。 良く解らない。佐助はもとより性に対してなにかしらの拘りはない。男は御免だが、それ以外ならば余程生理的に受 けつけない相手で無い限り、抱くことは出来る。小十郎は佐助よりも余程男であるけれども、褥に這い蹲って声を殺 す仕草は扇情的で、最中に揺らぐ夜色の目はぞっとするほどつやめかしい。大きなてのひらが体の上を這うのはひど く心地よく、薄い唇から漏れるおのれの名はそれがおのれの名であることが疑わしいような響を持っている。 体の相性はひどく良く、それが終われば用が済んだとばかりに佐助への興味を無くすところも楽で良かった。 だから始まりは「間違い」で、それから後は「都合」なのだと佐助は思っている。 こぽりと小十郎の性器の先端からしろい液体がこぼれるのを、佐助はうっとりと舐め取った。 「ねえ、右眼の旦那」 「な、んだ」 「達きたいでしょ」 ぐ、と性器の根本を抑えつける。 小十郎が呻いた。佐助は笑う。ねえ右眼の旦那。首を傾げて耳元に唇を寄せて、佐助は唄うように言った。右眼の旦 那右眼の旦那。達きたいなら、俺の言うことをきちんと聞いておくれよ。 「約束をしよう」 「は、ぁう―――――ぁ、く、そく」 「そう」 約束。 佐助は根本を抑えつけたまま、性器の先端を舐める。 ふたつだ、と佐助はその合間合間に言った。ふたつ約束をしてよ、俺と。 佐助は小十郎のことを気に入っていた。主に対する醜い感情が良い。それを自覚しているとこが良い。声も顔もその 体も、佐助のことを存在しようがしまいがどちらでもいいと思っているところも堪らなく良い。 ひとつめはね、と佐助はひくりひくりと収斂する性器を撫でながら言う。 「俺、死ぬンだったらあんたに殺されたい」 「あ、ァ」 「きれいに殺せよ。辛いのはいやだね。すッぱりと殺って」 それから。 佐助はへらりと笑う。 「だから俺より先に死んじゃ駄目」 ただの戯言だった。 行為の最中の、睦言の代わりの嫌がらせだ。 小十郎は聞こえても居ないだろう。虚ろになった目が、辛そうに細められてる。 佐助はするりと小十郎の性器から手を離した。それから口を開けて、これ以上はないというほどに膨張した性器を口 いっぱいに頬張る。途端、こぽりと苦い液体が口に流れ込んでくる。佐助は構わず頭を上下させ、唇と喉で小十郎の 性器を擦り上げる。小十郎の息の間隔が短くなる。そのうちに口の中に熱い液体が満ちた。 佐助は口の端からこぼれるそれをぐいと手の甲で拭い、にいと口角を上げ、小十郎を見上げる。はらりと額に落ちた 前髪を手で持ち上げてやれば、反対にその腕を取られて畳に押しつけられた。首に這う薄い唇の感触に佐助は目を細 め、足を腰に巻き付ける。 そのときには既に先程言った戯れ言のことは忘れていた。 それから時が経った。 途中から数えることを止したので、もうどれほどかは解らない。 その途中で武田が滅びて、けれども真田は残った。伊達政宗は武田を討伐する際に、真田幸村におのれの元で共に天 下を取る為に戦うかそれともこのまま死ぬかと二択を迫り、幸村はそれに「天下を取った貴殿を倒す」と返した。そ れで真田は延命した。今では天下を統一した伊達に次ぐ禄を持つ大大名となっている。 幾度か戦があって、何万という兵が死に、何千という民衆が死に、何年か経った。 その途中で佐助は右腕を無くした。 「しのびでなくともいい。其は、佐助に此処に居て欲しいのだ」 幸村はそう言った。 けれどもそれを佐助は受けなかった。 しのびは道具だ。使えなくなった道具は、塵でしかない。ねえ旦那。佐助は幸村に静かに言った。 ねえ旦那。俺はねぇ、道具なてめぇが随分とすきだったんですよ。 「塵にはなりたくねえンだ。あんたの邪魔はしたくないよ」 「誰がそんなことを言うものか。邪魔などではない。万に一つも、そんなことは思わぬ」 「だったら億に一つは思うかもしれない」 それでも俺は耐えられないんですよ。 佐助はそうひっそりと笑って、それからその日のうちに上田城を後にした。 国境付近の森の奥に、ちいさな小屋を建ててそこに引き籠もった。腕が無いというのは無論ひどく面倒ではあったけ れども、そのうちに慣れた。畑を作って、薪を割り、時折狩りをした。元よりこうだったのだと思えばそう辛いこと もない。どのような形状をしていても、死んでないならば生きていけるのだとしみじみと佐助は思った。さいわいし のびの術は使えたし、未だ鴉もおのれの元に居る。山奥での生活は悪いものではなかった。良いものでもなかった。 それはもう、なんでもなかった。 時折、山から降りて幸村の姿を遠くから眺めた。 そのときだけ、佐助はひどく安らかな満ちた心地がした。感情が動く、軋むような音がした。腕を無くし上田城を出 て、幸村のものでなくなった瞬間から、そういう音は佐助の体から消え失せた。幸村の道具でないおのれに、驚くほ ど佐助は興味を持てなかった。そうなってみると、おのれに如何に意味が無いかがとても良く解った。ただそれは絶 望ではなく、どことなく安堵に似ていた。幸村の傍に居て、何時この男におのれが厭われるのだろうかと日々怯えて 過ごすくらいならば、もうなにも入っていない器になった今の生活のなんとやすらかなことだ。 死んでも良かったが、自死するほどの理由もなかった。 まったく、と佐助は時折恨めしげに息を吐いた。 「あんたのせいだぜ、右眼の旦那」 誰も居ない森のなかに、声は響かずに消える。 佐助の右腕を落としたのは、片倉小十郎だった。 伊達が武田に攻め入ったときに、佐助は小十郎と対峙した。 既に信玄はなく、息子の勝頼が総大将となっていた。そこへと足を進めようとする小十郎を佐助は止める為に戦って、 そして負けた。小十郎はいつもの夜色の目をちらりとも動かさず、感情の消えた顔で佐助の腕を切り落とした。 痛みの前に熱が来て、次いで大量に流れる血の赤でくらりと眩暈がして、佐助はそのままその場に崩れ落ちる。そこ まで来ても痛みは感じなかった。感覚が既に無くなっている。大量の血溜まりの上に、ぽかりと浮いているおのれの 腕がなんだか冗談のようだった。佐助は思わず笑ってしまった。 「殺せよ」 佐助は小十郎を見上げてそう吐き捨てる。 小十郎は黙ったまま、血に濡れた刀を佐助の喉の上に構えた。 さてこれで死ねる。佐助は安堵に息を吐いた。その拍子にまた腕から血が吐き出されたが、もはやそれはどうでもい いことだった。佐助は目を閉じて、落ちてくる刀を待った。 けれども、幾ら待ってもそれは訪れなかった。 佐助は目を開く。そこには既に誰も居ない。霞む視界の端に、小十郎の翻る陣羽織が見えた。かすかに遠くで爆音が する。もしやしたら、彼方で佐助の主と小十郎の主が戦っているのやもしれない。小十郎はそれに加勢を――――― そんなことは出来はしないのだけれども、兎に角本来であれば陣に居る筈の政宗が戦場に出てきたので、それを諫め に行ったのだろう。佐助はぼんやりと思った。 それから笑った。 刀を振り下ろす一瞬ですら、惜しまれた。 そう思ったら血が流れるのも構わずに笑うしかなかった。 小十郎にとっておのれがどうでもいいものであることは知っていた。 でもさ、と佐助は思った。とどめくらいさして行ってもいいだろうに、と血溜まりに浮くおのれの腕を見ながら思っ た。かなしいなあ。あんたにとっちゃあ、そりゃあおれは、そういうものだろうけど。 「嗚呼―――――泣いちまおうかしら」 佐助はそうつぶやいて、それから意識を手放した。 起きたら上田城で、そこで真田は伊達の下に就くのだと知った。 小十郎とはあれ以来会っていない。会おうとも思わなかった。それは恨みでも憎しみでもなかった。すこしだけ、文 句を言ってやりたいなあちくしょう、と思うことはあったけれども、戦場でひとを斬るのは至極当然のことだ。どう して小十郎を怨むだろう。時折聞こえてくる伊達の家老の華々しい活躍も、佐助にとってはなんだかお伽噺のようで あったし、どうでもいい、と思った。 もうどうでもいい。 いろいろなことが既にいろを失っていて、佐助は要するに死ぬまで生きるだけのものになっている。 もともと、そういうものであったのだ。 ただ幸村という、馬鹿げてきらきらとしたものの近くに居て、おのれの中身をすこし買い被った。 そういうことだ。佐助はもとより空っぽだった。それがまた空っぽになっただけのことだ。とても自然なことだ。 佐助は城下町を出て、山を登る。獣しか通らぬような道をするすると登っていく。ゆるく笑んで、目を閉じると今日 見た幸村の姿が思い出された。娘の婚儀祝いだと町に出て民衆とたわむれるかつての主は、もう既に壮年も過ぎてい るけれども、それでも嘘のように相変わらずきらきらと透明だった。 いいものを見たな、と佐助は上機嫌でおのれの小屋に戻り、食料を土間に置いて、それからふるりと体を震わせた。 風がきんと冷えている。耳が凍り付いて、端から崩れていくような錯覚に陥る。火を焚こうと小屋の外の薪を取る為 に佐助は閉めたばかりの戸をまた引いて、外に出た。 ひょお、と風が鳴いて、佐助にまとわりついてくる。 地面に積もっていた木の葉が舞い上がる。山吹に朱に紅蓮、色取り取りの葉がくるくると旋回する。佐助は砂埃にち らりと目を細めて、それから過ぎ去るまで閉じた。しばらく経って、はらはらと木の葉が舞い落ちてくる気配がした のでようよう目を開いて、目を庇う為にあげた腕を下ろし、 そしてそのまま体の動きを止めた。 中途半端なところで止まった腕は、凍り付いたように動かなくなった。 ひとが立っていた。 男である。年の頃は、佐助と同じかすこし上だろうか。 黒い髪には白髪が混じり、それはもしかしたら黒より多いやもしれない。 年齢の割には隆々とした体つきをしているが、其れも何処か頼りなく見えるのは極端に細いからだろう。首には筋が 浮き上がって、皮膚を破ろうとするかのように鋭く形を為している。 目が黒く、底が知れない。 左のほおに、傷があった。 佐助は目を閉じて、それからまた開く。 矢張り男はそこに居た。佐助をじいと、静かな目で見ている。口は開かない。 佐助はどうしていいか一瞬解らなくなり、半ば呼吸も忘れたが、そのうちに意を決して口角を必死で持ち上げて、お やまあこれは、と殊更に高い声を吐き出した。 おやまあこれは、右眼の旦那じゃあないか。 「お久しぶりだね」 へらりと笑って、からりと戸を更に引いた。 男は―――――片倉小十郎は、佐助のその仕草にすこしだけ眉を上げる。佐助はまた笑った。笑って、さあさあ、と 声をあげる。そんなところに突っ立ってちゃあ、風邪をひくよ。 「客人を風邪引いて帰したなんて話になっちゃぁ、俺様の不名誉ですよ。 ほらほら、とっとと入った入った。俺は今から薪を持ってくるから、しばらく待ってておくれよ」 捲し立てると、小十郎が佐助の名を呼んだ。 さるとび、と言う。 背中が震えた。 「どうしたの」 「良いのか」 「なにが」 「入っても」 「何を仰ってるのやら」 佐助は片方だけ残った腕をひょいと上げる。 「招かれざる客なのは元々だろうに、おかしな遠慮は気色悪いな」 なにもないけど、白湯くらいなら出せるぜ。 ゆっくりしていけばいいさ、なんにせよ、昔馴染みに違いはねえんだ。 佐助の言葉に小十郎はしばらく黙って、ちいさく頭を下げて、邪魔をする、と短く言った。そしてすいと佐助の横を 通り抜けて小屋に入る。それを見届けた後に佐助は薪を取りに、小屋の裏に回った。 薪を抱え上げて、そこでようやく震えが収まった。 小屋の入り口に戻ると、まだ戸は開いていた。 そこから見える小十郎の相変わらず真っ直ぐな背中に佐助はこくりと息を飲み込んで、それからしばらくそこで立ち 竦み、とうとう意を決して足を小屋へと踏み入れ薪を置いて、かたん、と戸を後ろ手に引いた。 次 |